息を呑む、ぎゃあと叫びたくなる非日常的世界を描いた短篇集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(210)】
散策中に、鮮やかな薄紫色の塊が目に飛び込んできました。その家の主がシオンだと教えてくれた上に、好きなだけ切って持ち帰るよう勧めてくれました。女房は、わあ嬉しいと大喜びです。昼食で立ち寄った店の、土瓶蒸しの後で出てきた湯葉揚げの味が絶妙だったので、君みたいだねと言ったら、女房はきょとんとしていました。和風の庭は広くないのに、風情がありました。因みに、本日の歩数は13,291でした。
閑話休題、一風変わった短篇集『妻が椎茸だったころ』(中島京子著、講談社)のおかげで、非日常的な世界にたっぷり浸ることができました。
収録されている「リズ・イェセンスカのゆるされざる新鮮な出会い」では、語り手の女性がアメリカ留学中に出会ったリズ・イェセンスカが主役です。彼女は5回結婚した経緯を語るのですが、最後の4行で示された結末には息を呑みました。
「ラフレシアナ」の語り手は、「私はどちらかといえば不美人の部類に入る。人生が誰にも平等であってほしいと願うわけではないが、努力ではいかんともしがたいところで幸と不幸の多くが決まってしまうのは残念だ。世の中にはほんとうにあからさまに、不美人に対して露骨な嫌悪感を示す人々が存在する。それがどれほど相手の心を傷つけるかなど、おかまいなしだ」と呟きます。そんな彼女が友人のパーティーで、何をしても不手際、不器用な男性と知り合います。やがて、この食虫植物を偏愛する彼に恋人ができたと聞いた時、「私」は驚きます。「気の毒だけれど、彼ばかりは生涯、女には無縁だろうと思っていたからだ」。
そして、彼の恋人を見た「私」は、信じられない光景に衝撃を受けるのです。
「ハクビシンを飼う」の語り手の女性は、亡くなったおばさん(義父の妹)が一人で住んでいた田舎の家を処理するために訪れます。そこで出会った若い男は、この家に時折出入りしていたと言いながら、思い出話を始めます。それによると、天井裏に棲み着いたハクビシンの捕獲を依頼したことがきっかけで、おばさんは引き受けてくれた便利屋の社長と一緒に暮らすようになり、一方、捕らえられたハクビシンは処分はかわいそうだと飼われることになったというのです。語り手は、自分が抱いていたおばさんのイメージとあまりにも違う話なので驚きます。やがて、「どうしてそんなことになったのか、沙耶(語り手)はいまでもわからないのだが、沙耶の車でおばさんの家に戻り、西日のよくあたる縁側でとりとめのない話をしているうちに、体が内側からあたたかくなってきて、沙耶は隣に腰かけて木の実や果物のようないい香りをさせている男の腕をつかんで引き寄せた。・・・男のくちびるが少しずつおりてきて、沙耶の乳首をとらえた。指のほうは、すっかり熱くなって湿った下半身をまさぐった。甘痒い感覚がかけめぐった」。そして、思わぬ結末に、ぎゃあと叫んでしまいました。