母親の貧困化は子供の貧困化と一体だという重い指摘・・・【情熱的読書人間のないしょ話(211)】
散策中に、赤い秋の新葉が鮮やかなレッドロビンに出会いました。カナメモチとオオカナメモチを交配させて生み出された品種です。紅葉したドウダンツツジも見つけました。ナツメは特徴のある赤い実を付けています。近年、スズメが減っていると言われますが、我が家の周辺ではよく見かけます。因みに、本日の歩数は10,262でした。
閑話休題、『下層化する女性たち――労働と家庭からの排除と貧困』(小杉礼子・宮本みち子編著、勁草書房)は、重い内容の本です。
「本書で焦点を当てようとしているのは、若い女性の生活基盤が脆弱になっていて、とくに低賃金の不安定就業を続けざるをえない貧困な女性たちが増加しているという現象である。・・・これらの現象が若年女性の貧困化と下層化をどのようにして進めているのかを示そうとしている」。
本書では、貧困化・下層化する若年女性がさまざまな角度――●労働と家族から排除される現状と課題、●女性ホームレスや貧困化する女性の実態、●貧困化する女性の支援活動――から論じられています。
「女性の場合は、男性以上に格差にレバレッジがかかる。女性は労働による(収入)格差に加えて、親による(教育を受ける機会)格差、夫による(収入)格差という3積の格差があって、この3つの格差は相互に関連している。・・・これが、若年貧困女性が出現するロジックなのだ」。
「近年の『若年女性の貧困化』を生み出した『若年女性の非正規労働者化』と(結婚難、離婚の増加などによる)『若年女性の有配偶率の低下』という2つの社会的要因のうち、そもそもそのいずれかしか『問題化』できない論理構造をもっていた」。
「総合職正社員のように将来的にも自立可能な若年女性が増える一方で、不安定雇用で低収入の女性も増える。女性間の格差が拡大する。・・・キャリアも家庭も手に入れた一見『勝ち組』に見られる女性たちの状況にも目を向けるべきだ。・・・『勝ち組』女性たちの中にも広がる生き難さ、不安、メンタルヘルス系の様々な症状である。その背景にあるのは、現在の社会のありようがもたらす『労働と産むことの間の根源的な矛盾』であり、それを自助努力で乗り越えよと迫られる現状が『働くのが怖い、産むのが怖い』と彼女たちに言わせるのである。彼女らの生き難さ感やアイデンティティ・クライシスは、下層化する女性たちと相通ずるものである」。
「貧困化した若年女性は、性の商品化や暴力・搾取の対象とされやすく、彼女たちは仕事も居場所も選択肢がない。安全、安心な場所が物理的にも心理的にもない中で、未来が描けないでいる」。
いずれも重い内容で、政策的提言もなされていますが、私の心に一番突き刺さったのは、「母親の貧困化=子供の貧困化」という指摘です。「貧困化する女性が増加していく社会は2つの点で大きな危惧を感じざるをえない。1つは、貧困化する母子世帯の増加をもたらしているからである。母親の貧困化は子どもの貧困化と一体であり、子ども期の貧困は生涯にわたってマイナスの影響を及ぼす確率が高い。もう1つは、家族などの身内をもてない低所得で社会的にも孤立する中年期・高齢期の女性の増加につながると予測される。この2つの問題は女性や子どもの人権侵害の問題であり放置することはできない。また放置すれば将来にわたって当人だけでなく社会全体に悪影響を及ぼすであろう」。