離れ離れになってから2年後に送られてきた思いがけない手紙・・・【情熱的読書人間のないしょ話(213)】
カーディナル・テトラやレッド・ソード・テールなどの熱帯魚が泳ぐ水槽もハロウィーン仕様です。ハロウィーンの風習はすっかり日本に定着してしまいましたね。秋の夕暮れには癒やされます。
閑話休題、『みずうみ』(テオドール・シュトルム著、関泰祐訳、岩波文庫)を28年ぶりに読み返しました。
ある老人が、かつて愛した女性との青春の日々を懐かしく思い出すという形の抒情的な短篇ですが、世知辛い世の一服の清涼剤の役割を果たしてくれます。
「7年が過ぎ去った。ラインハルトはさらに高等の教育を受けるために、故郷の町をはなれることになった。全然ラインハルトに会えない時がくるなんて、(幼馴染みの)エリーザベトはとうてい納得がいかなかった。それで、ある日彼が彼女に、これまで通り童話を書きつけて彼の母への手紙と同封して送るから、彼女の方でもそれに対する感想を書き送ってくれなくてはいけないと話したとき、彼女はとても喜んだ」。
「休暇中何かきまった楽しみを持つために、彼は、大学に入った最初の数ヵ月熱心に研究した植物学を、エリーザベトに教えはじめた。何ごとによらずいつも彼に従順で、そのうえ学問好きだったエリーザベトは、すすんでそれに同意した。そこで彼らは週に数回野原や荒地へ採集に出かけた」。
「ついに休暇の最後の日がきて、出発の朝となった。エリーザベトは母にねがって、郵便馬車までラインハルトを見送るゆるしを得た。・・・ラインハルトは一瞬黙った。しかしやがて彼は彼女の手をとって、彼女の子供らしい眼を、真顔になって見つめながら言った。『僕の気持は今も昔も変りはしない。どうか、それを固く信じてくれたまえ! エリーザベト、君はそれを信じてくれる?』。『ええ』と彼女は答えた」。
それからおよそ2年が経ったある日、ラインハルトは思いがけない手紙を受け取ることになるのです。
青春とは、どうしてこんなに甘酸っぱいのでしょうか。