土偶の魅力に気づかせてくれる本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(282)】
散策中に、あまりにもスタイルがよい私自身のシルエットにびっくりしました(笑)。冬空に浮かぶ雲は何かのんびりしている感じです。森の片隅でひっそりと、フイリアオキが赤い実をつけていました。その近くに、葉の長さが30cmもあるヤツデがありました。因みに、本日の歩数は10,499でした。
閑話休題、『にっぽん全国 土偶手帖ーーあなたのおうちのご近所土偶、捜して下さい。』(譽田亜起子著、世界文化社)は、土偶を知るのに最適な一冊です。
土偶と埴輪は、どう違うのでしょうか。「『土偶』は縄文時代に作られた人物を模(かたど)った土製品であるのに対し、『埴輪』はずっと時代が新しい古墳時代に作られたもので、古墳(お墓)の上に並べて置かれた土製品です。そして『土偶』は自然の恵み、安産、命の再生などを祈願する目的で作られたとされていますが、『埴輪』は古墳に埋葬された個人の権威を示すもの、葬儀の様子を表したものだといわれています」。
本書では、著者が選び抜いた50体の土偶が紹介されていますが、土偶に敬意を表して一つひとつにニックネイムが付けられているのが特徴です。
「お洒落番長」というニックネイムが付けられた土偶は、「身体が空洞の『中空土偶』の中では日本最大。・・・妊娠を表す正中線と控えめな乳房があることから女性とされているが、違う意見も」あると説明されています。
「カオナシ」(板状土偶)は、「お腹の膨らみと乳房の様子から妊娠した女性だと考えられている」。外側にぎゅっと反り返った手が何ともユニークです。
「唇セクシー」は、「ポーズ土偶といわれる土偶の一種である。両手を合わせているところから『合掌土偶』と名付けられたが、少し開いた脚の表現から座産(座った姿勢で出産する方法)を表現したのではないかという説もある」。
「十字のムンク」は、「十字形土偶」の代表例ですが、ムンクの「叫び」のような顔をしています。
「てつこさーん」は、「おかっぱ頭でありながら、ブツブツと道具で突き刺した髪の毛の表現が、とてもユニークな土偶である。・・・顔の表現も至って写実的で、縄文人の風貌を容易に想像させる」。実際に縄文人はこういう顔をしていたのでしょうか。
「小顔クイーン」(遮光器土偶)は、「頭には王冠のような装飾、首には幾重にも重なったネックレスのような模様。そして顔のほとんどを占める円くて大きな目が特徴的。両腕の付け根付近に、遠慮がちに作られた小ぶりの乳房が女性を物語る」。
「艶女(アデージョ)」は、「たわわな乳房とアンニュイな表情が特徴的である。・・・良質な粘土で作られているため、肌は滑らかでウエストは緩やかにくびれ、乳房と相まって老若男女の目を釘付けにする魅力にあふれている」。著者の指摘どおり、あまりの色っぽさに私も目を瞠ってしまいました。
このほか、「八頭身美人」(縄文の女神)、「脇からボインちゃん」(遮光器土偶)、「兜ウーマン」、「おとぼけちゃん」(みみずく土偶)、「ご陽気花子さん」(山形土偶)、「いーてぃー」、「まるっこちゃん」(小型土偶)、「カマキリ仮面」(仮面の女神)などなど、魅力的な土偶のオン・パレードです。
読み終わった時には、すっかり土偶ファンになっていました。