榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

義太夫を聴いてみたくなる、橋本治の義太夫入門書・・・【情熱的読書人間のないしょ話(284)】

【amazon 『義太夫を聴こう』 カスタマーレビュー 2016年1月24日】 情熱的読書人間のないしょ話(284)

散策中に、池の周辺で、木の地蔵のような、瘤のようなものがニョキニョキと出ている不思議な光景に出くわしました。湿地のラクウショウは、地中の酸素が不足するため、根が気根(呼吸根)を地上に出して空中の酸素を吸収しているとのことです。因みに、本日の歩数は10,135でした。

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閑話休題、『義太夫を聴こう』(橋本治著、河出書房新社)は、馴染の薄い義太夫の入門書です。

「『浄瑠璃』が登場したのは室町時代のことで、同じ『語り物』であっても、それ以前の鎌倉時代からある『平家物語』を語る芸能とは区別をする意味で、新しく登場した語り物を『浄瑠璃』と言ったのでしょう。江戸時代になって、この『浄瑠璃』に人形の動きを付けて上演されるようになり、『人形浄瑠璃』と言われるものが出来上がります。この浄瑠璃を語るのが義太夫節で、それを語るための音を出す楽器が三味線です」。「江戸時代の日本音楽の中心にあるのは三味線ですが、この三味線は大きく2つに分けられます。1つは、歌舞伎の中心にあった長唄三味線で、もう1つは人形浄瑠璃を成り立たせた太棹の義太夫三味線です」。「義太夫節を語るのは、普通『太夫1人と三味線弾き1人』のコンビで、これを『一挺一枚』と言います。『一挺』の方が三味線で、『一枚』の方が太夫です」。「歌舞伎なら、科白の部分は役者が語りますが、人形浄瑠璃の人形は当然喋れないので、これも太夫が担当します。だから、1段丸ごと、長ければ1時間半くらい、太夫が1人で語り続けて、その間、三味線の演奏も続きます」。

著者も「(義太夫が)そんなに簡単に分かるものか」と言っているくらいですから、初心者向けに巧みに解説してくれても、正直言って、輪郭がぼんやりと見えてきた程度です。

それでも、私の好きな静御前が登場する『義経千本桜』4段目の口に当たる『道行初音旅』の詳しい解説を読み進めていくうちに、腰を据えて義太夫を聴いてみたくなりました。

「『義経千本桜』や『仮名手本忠臣蔵』は『有名な歌舞伎狂言』だと思われるようになって、人形浄瑠璃のドラマを吸収した歌舞伎は、人形浄瑠璃以上の人気を得て勝ってしまったのです。人形の顔よりも、生きた役者の顔の方がヴァリエーションに富んでいますから、同じものを演じたら、人形より役者の方に人気が集まってしまうのは仕方がないことかもしれません」。一度だけ本格的な人形浄瑠璃を見たことがあるのですが、この説明で、人形浄瑠璃と歌舞伎が似通っている理由が分かりました。