榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

吉田兼好は「物書き」の職人であった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(536)】

【amazon 『文学で読む日本の歴史 中世社会篇』 カスタマーレビュー 2016年9月22日】 情熱的読書人間のないしょ話(536)

散策中に、イチョウの実を集め、強烈な臭いの中、手袋をはめてギンナンを取り出している人を見かけました。ヤブランが薄紫色の花を咲かせています。白いシロバナマンジュシャゲ、赤いヒガンバナが盛りを迎えています。因みに、本日の歩数は10,896でした。

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閑話休題、『文学で読む日本の歴史 中世社会篇』(五味文彦著、山川出版社)は、この著者ならではの視点からの記載が目につきます。

例えば、「職人としての兼好」は、こんなふうです。「『徒然草』を著した兼好は出家しているので、『鶴岡八幡宮放生会職人歌合』に見える『念仏者』であり、『普通唱導集』に載る『歌人』でもあったが、実にその自らの職能の由緒を記したのが『徒然草』ということになろうか。・・・他とは毛色の違うこの(238段の)自慢話は、我が存在のアピールであったと考えられ、そこからうかがえる兼好の職能は物書きである。・・・その歌集からは和歌を代作していたことが知られ、『太平記』には高師直から依頼されて恋文を執筆した話が載っている。・・・同じ職人であったからこそ、兼好はこの時代の職人の台頭やその気質によく通じていたのである。『徒然草』が江戸時代によく読まれたのは、兼好が描いた職人気質が江戸時代の職人世界に引き継がれていたからであろう」。

「バサラの芸能」と「バサラ大名」にも、興味深いことが記されています。「バサラの語にはそのサンスクリット語からくる異文化の香りが漂っており、唐物・唐風を超えたイメージがある。大陸に渡航する僧が増えるなか、より際立った文化的特色がバサラとして表現されるに至ったのであり・・・」。「バサラ大名の典型が佐佐木道誉である。得宗の北条高時に仕え、尊氏に従って幕府滅亡へと動き、室町幕府の形成に貢献し、近江守護や政所執事など室町幕府の要職を務めたが、『佐々木系図』に『香会、茶道、人に長ず』と記されているように、茶や能、連歌、花、香といったこの時代のあらゆる領域の芸能の展開に深くかかわった。そのバサラ振りを物語るのが『太平記』に記されたエピソードである」。

このような角度を含め、多面的に中世の歴史を見直そうと試みた本書は、歴史好きには嬉しい一冊です。