自分の実人生と重なる役割を演じた63歳のイングリッド・バーグマン・・・【情熱的読書人間のないしょ話(552)】
【amazon DVD『秋のソナタ』 カスママーレビュー 2016年10月6日】
情熱的読書人間のないしょ話(552)
いつも、我が家の定位置、キッチンの磨りガラスに現れるニホンヤモリですが、何と今晩は子連れではありませんか。体長が親ヤモリの3分の1の5cmしかない子ヤモリに、女房は「かわいい! かわいい!」を連発しています。キジバトもカップルでやって来ました。
閑話休題、スウェーデン映画『秋のソナタ』(DVD『秋のソナタ』<イングマール・ベルイマン監督、イングッリド・バーグマン、リヴ・ウルマン出演、紀伊國屋書店)は、イングリッド・バーグマンの最後の映画作品です。
ノルウェーの田舎で暮らす娘夫婦が、連れ合いを亡くした母を自宅に招くところから幕が開きます。著名なピアニストとして華やかな生活を送ってきた母とは7年ぶりの再会です。自分の芸術と恋愛を優先するあまり、父や自分たち姉妹を顧みなかった母に対し、娘の長年の鬱積が爆発してしまいます。この娘と母のやり取りのシーンは圧巻です。
見終わって、3つのことを考えさせられました。第1は、人生の分岐点で仕事や恋を取るか家庭を取るかは、いつの時代も難しい問題であること。第2は、自分の実人生と重なる役割を演じるバーグマンはどんな気持ちで撮影に臨んだのだろうかということ。第3は、映画のストーリーからは外れますが、美しい女性は自分の老いをどう受け止めるのだろうかということです。
『秋のソナタ』が公開された1978年、バーグマンは63歳でした。乳がんで亡くなったのは、この4年後のことです。私にとって映画史上一番美しい女優はバーグマンですが、この映画に登場する彼女は、当然のことながら、凛と美しく光り輝いていた若き日のバーグマンではありません。彼女は自分の容色の変化にどう向き合っていたのでしょうか。