榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

動物化石の陰に隠れがちだが、植物化石は美しく芸術的なのだ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(663)】

【amazon 『楽しい植物化石』 カスタマーレビュー 2017年2月6日】 情熱的読書人間のないしょ話(663)

朝焼けに見とれてしまいました。あちこちでウメが芳香を放っています。ハクバイ(白梅)、コウバイ(紅梅)、シダレウメ(枝垂れ梅)が咲き競っています。雲は見飽きません。因みに、本日の歩数は10,830でした。

閑話休題、『楽しい植物化石』(土屋香・土屋健著、河出書房新社)は、アンモナイトや三葉虫、恐竜など、馴染みのある動物化石の陰に隠れがちな植物化石の入門書です。

「植物化石の形には芸術的な美しさがあります。現在では見ることのできない幹の美しい模様や、岩に刻まれた葉の美しい形、そして生きていた時の姿をそのままとどめたような断面などなど、私はその姿に魅了されてしまいました」。

先カンブリア時代、古生代、中生代、新生代に分けて、それぞれの時代のさまざまな植物化石が写真と文章で解説されています。

古生代のデボン紀の植物、ランカリアの化石はこのようにコメントされています。「糸を織り上げたような芸術的な形。花のようにも見えます。風に乗って運ばれてきた小胞子を効率よく捕まえるためにこのような形をしていたと考えられています」。ランカリアの胞子嚢は種子の前身と考えられています。

古生代の石炭紀のレピドフロイオスの化石はこうです。「レピドフロイオスのポイントは、整ったきれいなひし形の模様。チェック柄を彷彿とさせるかわいい模様です」。レピドフロイオスは鱗模様の巨大樹木です。

古生代のペルム紀のティエテアの化石。「珪化木は、樹木の幹の組織が二酸化ケイ素に置換されて化石化したもの。保存状態の良いものでは細胞の形がそのまま確認できるものもある」。

中生代のジュラ紀のアラウカリアの化石は、「二つの大きな球果がついている。アラウカリアの球果は少し縦長のボールのような形で、大きさも私たちの身近にある松ぼっくりとは比べ物にならないくらい大きい」と説明されています。

ジュラ紀のパララウカリアの化石は、中まで丸見えです。「種子まで確認でき、さらに球果の構造までわかる素晴らしい標本。断面は墨流しやマーブル模様のようにも見え芸術的」です。

新生代の古第三紀のクルシプテラの化石は、「クルミ類(科)の一種と考えられている。クルミ類の実といえば、丸いクルミの実が真っ先に思い浮かぶかもしれない。しかし実際には、ほとんどのクルミ類の実には、クルシプテラのような翼がつく」。「十字の形がきれい。クルシプテラの翼はほとんどが4枚です。プロペラのようです」。

新生代の第四紀のクリの化石。「クリは(栃木県)塩原で見つかる化石の一つ。葉だけではなく、花、実、イガなど、さまざまな部分の化石が見つかっていることが特徴だ」。「トゲがよく残っています。触ると痛そう。そんな感覚さえ感じるクオリティです」。

本書のおかげで、植物化石がぐんと身近に感じられるようになりました。