榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

エドワード・スノーデンが警告する監視強化社会・・・【情熱的読書人間のないしょ話(754)】

【amazon 『スノーデン 日本への警告』 カスタマーレビュー 2017年5月15日】 情熱的読書人間のないしょ話(754)

散策中に、アオスジアゲハの写真を撮ることができたのですが、太陽光の反射で、その鮮やかな青色が飛んでしまい、残念無念。美しさが伝わる写真が撮れるまで、頑張ります。どちらも黄色ですが、キタキチョウとモンキチョウは翅の模様で見分けることができます。翅を開いたベニシジミは驚くほど橙色が鮮やかです。因みに、本日の歩数は10,830でした。

閑話休題、2013年6月にアメリカ政府による個人情報収集の手口を内部告発した元CIA(アメリカ中央情報局)、NSA(国家安全保障局)局員のエドワード・スノーデンに対するイメージが、『スノーデン 日本への警告』(エドワード・スノーデン他著、集英社新書)によって大きく変わりました。

アメリカ政府は、テロ防止の名の下に、技術発展の著しいインターネットを用いて全世界の一般市民に対する大規模な監視体制を構築しているというのです。権力が際限のない監視を行い、それが秘密にされるとき、権力の濫用と腐敗が始まると警鐘を鳴らしているのです。

それはアメリカの話だろと対岸の火事視している日本人に、その態度は間違いだと指摘しています。日本の監視政策は世界に類を見ないほど秘密主義的であること、たとえ現時点ではアメリカほどの監視技術が用いられていないとしても、近い将来には現実のものとなる可能性があること――が、その理由です。

「(アメリカ政府が収集していた)情報を総合すると、かつての私のようなNSAのインテリジェンスアナリストが、『生活のパターン』と呼んでいたものになります。NSAの仕事というのは個人の『生活のパターン』をつかむことでした。かつては手作業で行われていました。犯罪活動にかかわっているかもしれないという情報をもとに、裁判所を説得し、記録を収集し、行動を監視していました。昔と異なり、今はそのような監視活動を行う必要はありません。監視は常に行われているためです。すべての記録は自動的に収集され、傍受され、保管されているのです。アメリカ政府は、容疑を抱いた相手方がアメリカ人でない場合には、裁判所の令状を得ずに監視できます。つまり、日本人やフランス人やドイツ人などの外国人に関するものであれば、フェイスブックやグーグル、アップルが保有する情報を裁判所の令状なしに得ることができたのです」。

「2013年のリークによって得られた技術的な教訓は、ネットワークの回路は危険に満ちあふれているということです。2013年以前から、インターネット通信の傍受が可能であるということは理論的には明らかでした。ハッカー集団に悪用されうるということも理論的には明らかでしたが、証拠はありませんでした。こうした活動を政府が行っているという確証もありませんでした。今回のリークにより、政府がインターネット回路を傍受して、テロリストだけでなくまったく無罪の人をも監視しているということが明らかになりました」。

「プライバシーとは、悪いことを隠すということではありません。プライバシーとは力です。プライバシーとはあなた自身のことです。プライバシーは自分であるための権利です。他人に害を与えない限り自分らしく生きることのできる権利です。思索する時、文章を書く時、物語を想像する時に、他人の判断や偏見から自らを守る権利です。自分とは誰で、どのような人間になりたいのか、このことを誰に伝えるかを決めることのできる権利です。訪れるところ、関心や趣味、読んだ本の題名は、あなたが共有したいと思わない限り、ほかの人が知ることはできません。どこで線引きするかはあなた次第です。・・・隠すことがなければプライバシーの権利を気にする必要がないというのは、話したいことがなければ言論の自由は必要ないというのと同じくらい危険なことです。弱い立場に陥る可能性を想像する必要があります。言論の自由やプライバシーの権利は社会全体に利益をもたらすものです。人々は、自分自身が危険な立場に置かれたり、異色な存在でなくとも、言論の自由やプライバシーの権利がもたらす利益を十分に享受しているのです。すべての権利は守られなくてはなりません」。私は大学で法学を学びましたが、プライバシーの権利について、このスノーデンのものより分かり易く説明された例を知りません。彼の頭脳明晰さが窺われます。

本書を読めば、スノーデンは、アメリカ政府が言うような国家機密を暴露した犯罪者ではなく、正義感の強い、勇気と信念を持った内部告発者であることがよく分かります。また、日本語を学んだほど日本贔屓というだけあって、日本が現在置かれている状況にスノーデンが通暁していることに驚かされました。