榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「ヒト・モノ・カネ」は、今や、「3つのクラウド」に取って代わられた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(850)】

【amazon 『「0から1」の発想術』 カスタマーレビュー 2017年8月17日】 情熱的読書人間のないしょ話(850)

地元の「里山の自然誌」展で、剥製ですが、ノスリ、サシバの雌、ツミの雌、フクロウ、アオバズク、トラツグミを間近で観察することができました。トラツグミは、『平家物語』で源頼政が退治した伝説上の怪獣、鵺(ぬえ)の正体と見做されています。そのヒィー、ヒィーという鳴き声が不気味がられたのでしょう。里山の春夏秋冬の景色を描いた作品に癒やされました。

閑話休題、『0から1」の発想術』(大前研一著、小学館)は、ビジネスパースンが生き抜くために必要な最大のスキルは「0から1を創造する力」、すなわち、「無から有を生み出すイノヴェーション力」だと強調しています。

「SNSを使いこなしている、ネット検索に長けている――こうした事例を持ち出して、『自分はITに強い』と勘違いしている人は少なくない。プログラミング言語を駆使して、自分で検索サイトを立ち上げるような『創造』をした人間を『ITに強い』というのだ。SNSを使いこなす程度で自慢するのは、カラオケ上手と何ら変わらない。伴奏なしのアカペラでも上手に歌えるのか? 問われているのはそういうことなのだ」。大前は、相変わらず、辛口です。

「ケース・スタディは、まだ答えが出ていないリアルタイムの『生きた事例』を対象にして『もし、私が○○の社長だったら・・・』と、その人の立場で考え続けていなければ、実践的な問題解決能力を身につけることはできない。ただし、リアルタイムのケース・スタディは、決して『解』を見つけることが目的ではない。自分自身で情報を収集し、取捨選択し、分析し、事実に基づいた考察を重ねて『自分なりの結論を導き出す』能力を磨くことが重要なのであり、それを何度も繰り返すことによって発想力・問題解決力がついていくのである」。

著者は、例として、こんな問いを立てています。「もし、あなたが都道府県魅力度ランキングで3年連続最下位になった茨城県の知事だったら、どのようにして順位を上げるか」。

「無から有を生み出すイノヴェーション力」を身につけるための考え方が11挙げられています。この中で、私がとりわけ刺激を受けた考え方は、●「ニュー・コンビネーション――『組み合わせ』で新たな価値を提案する」(ウィキペディア、DeNAのモバオクが好例)、●「固定費に対する貢献――『稼働率向上』と『付加価値』の両立を」(熊本県の黒川温泉が好例)、●「RTOCS/他人の立場に立つ発想――『もしあなたが○○だったら』が思考を変える」(例えば、2つ上の立場で考える――具体的には、あなたが係長だったら2つ職位を上げて『部長』として、部長だったら同様に『社長』として考える)です。

個人的に勉強になったのは、この指摘です。「20世紀のビジネスの3要素は『ヒト・モノ・カネ』と言われたが、それが今や『クラウドソーシング』『クラウドコンピューティング』『クラウドファンディング』という『3つのクラウド』で代替できるようになり、少人数でも(極端に言えば1人でも)、あるいは設備や資金がなくても、新たなビジネスが展開できる時代になった」。

大前は、今も刺激の震源地であり続けています。