榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

芳香を漂わせるキンモクセイは雄ばかりで、雌はいないという事実・・・【情熱的読書人間のないしょ話(907)】

【amazon 『散歩が楽しくなる 樹の手帳』 カスタマーレビュー 2017年10月8日】 情熱的読書人間のないしょ話(907)

一族郎党が集まって、父の墓参りをし、母の91歳の誕生日を祝いました。因みに、本日の歩数は10,164でした。

閑話休題、『散歩が楽しくなる 樹の手帳』(岩谷美苗著、東京書籍)には、散策中に見かける身近な樹木102種が収載されています。充実した説明だけでなく、樹木医らしからぬユーモアも本書の魅力となっています。

「クロガネモチは雌雄別々の木なのですが、ほとんど雌の木しか流通していません。赤い実がならない雄の木は、鑑賞価値がなく売れないからです。私が『雌だけでどうやって赤い実がなるの?』と樹木医仲間に聞いたら、『モチノキ科だったら、なんでもいいのよ』という答え。クロガネモチの赤い実の父親は、ゆきずりのモチノキ科?」。

「ネムノキとオジギソウを混同する人が多いのですが、ネムノキは樹木で、葉に触っても寝ません。触れると葉が寝るのはオジギソウで、これは草・・・。ネムノキの葉には光センサーがついていて、暗くなると葉を閉じる就眠運動をします」。

「(メタセコイアは)約80万年前まで日本にいた木なのですが、今植えられている木は、どんなに大きくても100歳を超えていません。化石植物だったメタセコイアと同じ木が中国で発見され、1949年以降にアメリカ経由で日本に苗木がもたらされました。逆算すると最初期に植えた木であっても、2020年は約71歳です」。

「(カツラは)秋に葉が黄色く色づき、落ち葉が甘い香りを放ちます。醤油、カルメ焼き、綿菓子、みたらし団子などと表現されます」。

「キンモクセイには雄花が咲く雄の木しかなく、雌はいません。だからキンモクセイには実はならず、ずっと独り者です」。

「天狗のウチワのような大きなヤツデの葉。八手だから当然葉先の数は8でしょうと、数えてみたら、8はほとんどありません。7か9が多いようです。ヤツデとは8つぐらいたくさんあるというざっくりした意味のようで、平均値8ってことで納得しようと思いました」。

「ライラックは同じモクセイ科のイボタノキを台木にして接ぎ木栽培されます。・・・上に接がれたライラックが枯れて、台木からイボタノキの枝が伸び、いつの間にかイボタノキになっていることは多々見られます。上はライラック、下はイボタノキの両方の場合もあります。台木の下積み生活で華やかなライラックを支えつつ、イボタノキはあわよくば主役の座を狙っているのです。紫だった花が白い花になり、おかしいなーと思ったら、それはライラックとイボタノキの主役交代劇です」。

本書のおかげで、明日からの散策が一段と楽しくなりそうです。