芥川龍之介がカップ焼きそばの作り方を書いたら、こうなった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(997)】
野鳥観察会に参加し、44種の野鳥を観察することができました。ハシブトガラスたちが鳴き声で威嚇しても、ノスリは平然としています。珍しいトモエガモが見つかりました。カシラダカ、カワセミ、モズ、ヒドリガモ、コガモ、アオサギをカメラに収めました。因みに、本日の歩数は20,867でした。
閑話休題、『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(神田桂一・菊池良著、宝島社)には、紀貫之、シェイクスピア、ドストエフスキー、夏目漱石、志賀直哉、谷崎潤一郎、チャンドラー、川端康成、太宰治、松本清張、三島由紀夫、村上春樹など100人が、もしカップ焼きそばの作り方を書いたらという想定で書かれた文章が並んでいます。めz
いずれも、その人物の文章の特徴や癖をよく捉えたものばかりですが、一番の傑作は、芥川龍之介になぞらえた「羅生門」ならぬ「羅蕎麦門」でしょう。「申の刻下がりの出来事である。下人は六分の空腹と四分の好奇心とに動かされて、カップ焼きそばに手をかけた。その蓋を少しずつ開けるのに従って、かやくとソースの袋が見えてくる。下人の食欲は勢いよく燃え上がり出した。二つの袋を取り出し、右手で薬缶を手に取って、容器にお湯を注ぐ。そうして、数分待つと、容器を掴んでお湯を捨てたのである。『己(おれ)がこれを食べようと恨むまいな。己はこうしなければ、饑死にする体なのだ』。下人はすばやく、ソースをかけて箸で混ぜた。それから、焼きそばを手荒く口に運び、またたく間に食べきった。後には、ただ、黒洞々たる容れ物があるばかりである。空の容器の行方は、誰も知らない」。
松尾芭蕉の「麺の細道」は、こんなふうです。「キッチンや 薬缶飛びこむ 水の音。熱湯を 集めて流し 湯切りかな。閑さや 部屋にしみ入る 啜る音。から容器 大食いどもが 夢の跡」。
俵万智の「カップ焼きそば記念日」は、「『このかやくがいいね』と君が言ったから七月六日はカップ焼きそば記念日」と書かれています。