五木寛之の高齢者への孤独・回想の勧めに異議あり・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1066)】
東京・杉並の荻窪を巡る散歩会に参加しました。近衛文麿の別邸「荻外荘(てきがいそう)」を見学し、近衛が服毒自殺した部屋をカメラに収めることができました。昭和15(1940)年に客間で行われた「荻窪会談」の写真には、左から、各大臣就任直前の近衛(首相)、松岡洋右(外相)、吉田善吾(海相)、東條英機(陸相)が写っています。荻窪のソメイヨシノは満開です。アンズ、シデコブシ、ヒメツルソバが咲いています。因みに、本日の歩数は16,810でした。
閑話休題、『孤独のすすめ――人生後半の生き方』(五木寛之著、中公新書ラクレ)は、高齢者に孤独を勧めています。そして、楽しかった過去を回想することで孤独を楽しめというのです。
「老いにさしかかるにつれ、孤独を恐れる人は少なくありません。体が思うように動かず、外出もままならない。訪ねてくる人もおらず、何もすることがなく、無聊をかこつ日々。世の中からなんとなく取り残されてしまったようで、寂しいし、不安だし、人によっては鬱状態におちいりかねない」。
「だとすれば、後ろを振り返り、ひとり静かに孤独を楽しみながら、思い出を咀嚼したほうがよほどいい。回想は誰にも迷惑をかけないし、お金もかかりません。繰り返し昔の楽しかりし日を回想し、それを習慣にする。そうすると、そのことで錆びついた思い出の抽斗が開くようになり、次から次へと懐かしい記憶がよみがえってくるようになる。はたからは何もしていないように見えても、それは実は非常にアクティブな時間ではないでしょうか。孤独を楽しみながらの人生は決して捨てたものではありません。それどころか、つきせぬ歓びに満ちた生き生きした時間でもあるのです」。
確かに、著者は高齢者の実情の一面を言い当てています。しかし、五木より13歳年下の高齢者である私は、彼の孤独・回想の勧めには異議ありです。
本書の中で、著者は、こういった考えにはどちらかといえば懐疑的として、次の4つを挙げています。●ボランティアやNPOの活動などにも参加して、なるべく積極的に他人とコミュニケーションをとる。●カラオケ会や団体旅行に行くなど、レクリエーションを生活に取り入れる。●体操やウォーキングを習慣にし、なるべく体を動かすようにする。●いろいろなことに好奇心を持つ。
この4つを実行している高齢者である私としては、独り回想で昔を懐かしむよりも、この4つのほうが前向きでポジティブな生き方であり、こちらのほうが人生を楽しめると考えているからです。
意見は異なりますが、高齢期をどう生きるかを考えさせてくれる一冊です。