動物たちは物理学者なのか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1189)】
千葉・柏の「あけぼの山農業公園」のヒマワリ畑は黄色一色に染まっています。日本庭園は静寂に包まれています。因みに、本日の歩数は11,601でした。
閑話休題。『動物たちのすごいワザを物理で解く――花の電場をとらえるハチから、しっぽが秘密兵器のリスまで』(マティン・ドラーニ、リズ・カローガー著、吉田三知世訳、インターシフト)に登場する動物たちは、まるで物理学者のようです。
熱を利用する動物として、ステフェンス・ハマダラカのメスが登場します。「メスの蚊が血を吸うあいだ、蚊の体温を(熱)マップで観察することにより、ラッツァーリとラオンデレは、メスの蚊が尿と血の混ざった球を排出するのは、体温を下げ、熱による負荷がかからないようにするためだと証明した。お尻にぶらさがった球から水分を蒸発させると、蚊も体温が下がるわけだ。蚊のメスは気化冷却を利用している」。
力を利用する動物として、ヤモリが取り上げられています。「ヤモリたちは、人工照明具に引き寄せられる虫を獲物にしようとしているのだ。だが、彼らはどうやって重力に逆らい、天井を走り回れるのだろう?・・・ケラー・オータムが行った一連の実験によって2002年に示されたように、ヤモリはファンデルワールス力という、分子間に働く小さな引力を利用する。・・・ヤモリのいくつかの種は、長年のあいだに、くっつきやすい足の構造を進化させては放棄することを数回繰り返してきた。それはおそらく、生息条件の変化に伴い、そのような足がどの程度有益なのかが変化したからだろう。・・・『ヤモリの接着力は、とても素早く、繰り返しオン・オフできるのです』」。
流体を利用する動物について。「液体の表面を引っ張ってピンと張らせている表面張力は、アメンボが水に沈むのを防ぎ、アメンボは半球状の渦を作りながら水面を歩く。ネコは、舌で水の表面に触れ、その舌を口のなかまで持ち上げるときに水柱を作る」。
音を利用する動物の「オスのクジャクは周波数が低すぎて人間には聞こえないインフラサウンド(超低周波音)を使ってメスに求婚する。コウモリは逆に周波数が高すぎて(人間には)聞こえない超音波を使って獲物を探し、また、洞穴の壁との衝突を避けるためにもこれを使う。サハラツノクサリヘビは、地面を伝わる振動を使ってネズミを追跡し、ゾウも同様の方法で危険を感知する」。しかも、ゾウは三角測量を使うことによって、その音がどこから来ているか、より正確に絞り込むことができるというのです。
電気・磁気を利用する動物の「アカウミガメは、地球の磁場を感知できる方位磁針が対内にあり、それを使って方角を特定し、海を回遊していた。オリエントスズメバチは生まれつき太陽電池を持っており、それで日光から電気を生み出している。しかもそのとき、量子力学の奇妙な世界を利用していたのだった」。
光を利用する動物について。「偏光を利用して目的地にたどり着くアリやミツバチ。翼の下から紫外線を送って、(仮親から)餌をたくさんもらうカッコウのヒナ。昆虫を水に落とすために屈折を補正するテッポウウオ。光を出しながら獲物を探す魚から隠れるために体の色を変えるタコ」。
動物好きには見逃せない一冊です。