廃道を愛して已まない若き女性が、独りで各地の廃道を訪ね歩いた記録集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1368)】
私もこの目で「冬の貴婦人」タゲリを見てみたいと、女房に言われ、耕地を再び訪れました。15mほどの場所から、羽の構造色の美しい光沢を観察することができました。飛び立つ時、ミューという子猫のような鳴き声を発します。遠くでは、15羽ほどが群れています。因みに、本日の歩数は11,851でした。
閑話休題、『廃道を歩く――地図で楽しむ「忘れられた道」』(石井あつこ著、洋泉社)は、廃道を愛して已まない若き女性が、独りで各地の廃道を訪ね歩いた記録集です。
「廃道とは文字どおり、『廃』された『道』のことだ。登山道や藩政期に使われていたいわゆる古道の廃道もあるが、オブローダー(廃道探索者を意味する造語)にとっての廃道は、徒歩道ではなく明治時代以降に拓かれた馬車道や自動車道の廃道を指すことが多い。・・・地図から消え、記憶からも消えつつある過去の道。廃道になった理由は、さまざまにある。・・・人が人のためにつくり、利用し、人の都合で棄てられ忘れられた道。その工事に携わった人々の苦労、開通に歓喜した住民、多くの人々の想いを時空を超えて感じられるというのが、廃道歩きをしていて何よりもうれしい」。
例えば、「山中に残る幻の馬車道を辿る 新青梅街道・黒川通り(山梨県北都留郡丹波山村、甲州市)は、こんなふうです。「黒川通りの魅力は『明治道』『馬車道』『未成道』だが、加えて、明治時代の遺構現存度も特筆すべき点だと思う。・・・廃道歩きでよく見かけるつまらない植林地とは無縁の景観を保持している。こんな廃道は日本中を探してもきっと稀だろう。・・・藤尾橋を渡り、国道411号に戻ったところで、わたしはしゃがみ込んだ。怖かったー。廃道探索を始めてから13年、ずっと恐れていた熊。とうとう出会ってしまった。正直、筋肉痛も黒川通りの余韻も、すべてを熊にもっていかれた。まったく、もう! こんな恐い思いをして、それでもわたしは今も懲りずに廃道探索をしている。(道路県令ともいわれた山梨県令)藤村(紫郎)や工事に関わった人々の熱意に会いに、道路開通に歓んだ住民の笑顔に会いに。キザだけど、きっとそれがわたしの支えでもあるのだ」。
肉体的にも精神的にも実際の廃道歩きはとても無理な私の如き者でも、著者と一緒に廃道歩きをしているような気分になれる一冊です。