18年間、コンビニのバイト生活を続けてきた36歳で未婚の女が、突然、男と同居を始めたが・・・ ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1544)】
東京・台東の浅草寺の「ほおずき市」を楽しみました。現在、3つの図書館から借り出している本たちです。因みに、本日の歩数は11,393でした。
閑話休題、『コンビニ人間』(村田沙耶香著、文春文庫)は、不思議な味わいの作品です。
36歳の古倉恵子は、大学生時代からのコンビニでのバイト生活が18年も続いています。これまで恋愛経験がなく、未婚。コンビニの世界にすっぽり嵌まり込んでいる恵子に、突然、変化が訪れます。婚活目的でコンビニのバイトを始めたものの、仕事ぶりや素行に問題があり首になった35歳の男・白羽と、恵子の部屋で同居することになったのです。
「(コンビニの)一日の始まり。世界が目を覚まし、世の中の歯車が回転し始める時間。その歯車の一つになって廻り続けている自分。私は世界の部品になって、この『朝』という時間の中で回転し続けている」。
「両親は甘く、いつまでもアルバイトをしている私を見守ってくれている。申し訳なく思い、二十代のころ、一応就職活動をしてみたこともあるが、コンビニのバイトしかしていない私は、書類選考を通ることさえめったになく、面接にこぎつけても何故何年もアルバイトをしていたのかうまく説明できなかった。毎日働いているせいか、夢の中でもコンビニのレジを打っていることがよくある。ああ、ポテトチップスの新商品の値札がついていないとか、ホットのお茶が沢山売れたので補充しなくては、などと思いながらはっと目が覚める。『いらっしゃいませ!』という自分の声で夜中に起きたこともある。眠れない夜は、今も蠢いているあの透き通ったガラスの箱のことを思う。清潔な水槽の中で、機械仕掛けのように、今もお店は動いている。その光景を思い浮かべていると、店内の音が鼓膜の内側に蘇ってきて。安心して眠りにつくことができる。朝になれば、また私は店員になり、世界の歯車になれる。そこことだけが、私を正常な人間にしているのだった」。
同居を始めた、理屈っぽい白羽の台詞。「『処女のまま中古になった女がいい歳してコンビニのアルバイトしているより、男と同棲でもしてくれほうがずっとまともだって妹さんも思ってるってことですよ』。きのうのまごついた様子はなくなっていて、いつもの白羽さんに戻っていた」。
「ほとんど、詐欺師をそれとわかっていて家に住まわせるような感覚で白羽さんを家に置き始めた私だが、意外と、白羽さんの言うことは当たっていた。家に白羽さんがいると都合がいい。そう思うのに時間はかからなかった」。同居していても、白羽には恵子に手を出そうという気などはさらさらなく、一方、恵子のほうはペットを飼っているような気分なのです。「白羽さんを飼い始め、コンビニでの私はさらに順調だった」。
ところが、「18年間の勤務が幻だったかのように、あっけなく、私はコンビニ最後の日を迎えた」。この後、思いがけない展開が待ち受けていようとは!
自分にとって居心地のいい世界とは、どういうものか、を考えさせられる作品です。