榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

恐竜絶滅の原因と、最古の鳥に関する著者の大胆な仮説は説得力がある・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1578)】

【amazon 『新説 恐竜学』 カスタマーレビュー 2019年8月13日】 情熱的読書人間のないしょ話(1578)

シオカラトンボの雄、雌(ムギワラトンボとも呼ばれる)、スイレンの葉の上でのシオカラトンボの交尾、ツマグロヒョウモンの雄、雌、コミスジをカメラに収めました。因みに、本日の歩数は10419でした。

閑話休題、『新説 恐竜学』(平山廉著、カンゼン)の魅力は、3つにまとめることができます。

第1は、ユーモア溢れるイラストや図も総動員して、最新の恐竜学が分かり易く解説されていること。

第2は、読者が知りたいと思うこと――恐竜の立ち姿は? 羽毛があった? 色は? 鳥との関係は? 子育ては? 群れを作った? 運動能力は? 泳げた? 寿命は?――に、きちんとした答えが用意されていること。

第3は、学界の定説を踏まえた上で、著者自身の仮説が明示されていること。

「恐竜が絶滅したのは巨大隕石の衝突がおもな原因ではなく、恐竜の多様性そのものが何らかの原因で低下していたこと・・・恐竜の絶滅を引き起こした原因のなかで、もしかすると最大の影響を及ぼしたかもしれないのが、哺乳類の台頭です。・・・ジュラ紀からは恐竜が大繁栄を始めます。哺乳類型爬虫類の子孫である哺乳類は体が小さく、目立たない存在でしたが、『白亜紀後半』になると一気に多様性を拡げていきました。その要因として、花を咲かせる植物、すなわち被子植物が白亜紀中頃から増え、これに伴って花粉を媒介する昆虫(チョウやハチなど)も登場します。すると、植物の果実や昆虫を主食とする哺乳類も多様性を拡大したというわけです。体が小さい哺乳類の数が増えることで陸上の生態系の不安定さが増し、ついには恐竜を滅ぼしたのではないかというのが私の仮説です。これで『なぜ陸上の生態系で恐竜だけが絶滅したか』が説明できるのではないでしょうか? こうした『新型哺乳類(有胎盤類や有袋類)』の進化は各大陸で時間差がありました。有胎盤類の進化が速かった北半球では恐竜の絶滅も速く、南米やオーストラリアなど南半球では恐竜は白亜紀以降も繁栄を続けていたかもしれません。じつは、南米やインドなどでは、隕石衝突後の古第三紀初頭の地層からも、恐竜の化石が報告されているのです。要するに、我々人類の祖先をふくむ哺乳類は、巨大隕石の衝突で偶然起きた恐竜の絶滅に助けられたのではなく、自らの力で恐竜を絶滅へと追いやり、新生代の『哺乳類時代』への道を切り開いたのではないかと思うのです』。

「始祖鳥より1000万年前のジュラ紀の中国から見つかるアンキオルニス・・・アンキオルニスには風切羽のある大きな翼があり、かなり自由に空を飛ぶことができたと思われます。・・・(鳥類の定義については)私は『鳥類とは、風切羽のある翼を備えていて、空中を飛行可能な動物である』とすればいいと思います。誰にとってもすごくわかりやすい定義ではないでしょうか。この基準にしたがうと、アンキオルニスは始祖鳥よりも約1000万年も古い最古の鳥になります。ところが、アンキオルニスはヴェロキラプトルなどと同じくマニラプトル類の恐竜とされ、鳥類には含まれていません。どうしてなのでしょうか? 中国産のアンキオルニスを鳥と認めてしまうと、ドイツから見つかっている始祖鳥は最古の鳥でなくなってしまいます。これは最古の鳥類の化石が、ヨーロッパから失われてしまうことを意味します。これが、古生物学研究の主流を占めている欧米の研究者には我慢ならないことのように私には思えるのです。科学者といえども人間ですから、感情によって解釈が左右されることがあるということをこの論争は示しているのではないでしょうか?・・・もしアンキオルニスがいずれ正式に鳥類として認められれば、ヴェロキラプトルなどマニラプトル類の多くが(後のダチョウやエミューのように)二次的に飛翔能力を失った鳥ということになるでしょう」。

恐竜絶滅の原因についても、最古の鳥についても、著者の大胆な仮説はなかなか説得力があります。

私たちの知的好奇心を掻き立てる刺激的な一冊です。