「みんな仲良く」を否定し、「夢はかなうとは限らない」と教える中学校校長の型破り教育・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1796)】
ハクモクレン、サラサモクレン(モクレンとハクモクレンの交雑種)、モクレン(シモクレン)、コブシ、シデコブシが咲き競っています。因みに、本日の歩数は10,795でした。
閑話休題、『麹町中学校の型破り校長 非常識な教え』(工藤勇一著、SB新書)では、タイトルどおり、「当たり前」でない「非常識」な教育が展開されています。
東京の千代田区立麹町中学校の校長・工藤勇一が、6年前の着任以来、実際に行っている教育は、宿題廃止、定期テスト廃止、頭髪・服装の校則撤廃、固定担任制廃止――と、驚くことばかりです。
「麹町中学校の最上位の目標は、『自律した子ども』を育てること。それは、言い換えれば『人のせいにしない子ども』です。その上で、『人間はみんな違うし、対立が起きるのは当たり前である』『違いを乗り越えるためにどうしたらいいか』を教えています。『世の中まんざらでもない。結構大人って素敵だ!』。生徒たちにそう思ってもらうことが、麹町中学校の最上位の目標です」。
著者は、「これからの時代の必須スキル、非認知能力」として、このようなものを挙げています。●課題発見力と課題解決力、●試行錯誤を続ける力や挑戦意欲、●メタ認知力、●情報活用力、●感情コントロール力、●人を動かし、巻き込む力(協働する力)、●ゼロから価値を生み出す力。
著者は、自身の体験を踏まえて、どんな領域でも「要領をつかむまでが勝負」であり、「要領をつかむと苦手意識がなくなります。すると、新たな課題が現れても『じゃあどうやって料理するかな』とその対象を矮小化して捉えられるようになります」と述べています。私にも、同じ体験があります。学校の授業で負の数を教えられ、かなり戸惑った時、自分は未知のことに慣れるには時間がかかるが、それを乗り越えればちゃんと対応できるタイプの人間なんだと自覚したのです。その後、大人になっても、その自覚のもと、新しいことに取り組んできました。
著者の「みんな仲良く」の否定にも、驚きました。「当校では出る杭だらけの社会における身の振り方を教えるようにしています。具体的には、こうです。●人はみな違うと理解してもらう、●感情をコントロールする重要性を教える、●対立があったときの合意形成のはかり方を学ぶ。そしてこれこそ子どもたちが社会に出たときに必ず役に立つ、ダイバーシティ教育の根幹だと考えています」。
「どんな子でも絶対にリーダーになれる」には、励まされます。「私の考える優れたリーダーの条件を整理しておきましょう。●ありのままを受け入れることができる、●自分をよく知っている、●相手をよく知っている(差分をよく知っている)、●自分の言動がもたらす相手の反応を予測できる、●予測に応じてアプローチの手法を工夫できる。これらを満たすことができたらリーダーになることができます」。
「親の役割は、子どもを引っ張り上げて親がいないと何もできない子に育てることではなく、一人で生きていける知恵を授けること。あるいは、その環境を与えていくこと。たとえそれができなくても、せめて一人で生きていける知恵を得る機会を奪わないことが大切だと思います」。「もうひとつ『心的安全状態をつくりやすい脳』に変えていくために大人ができることといえば、『失敗は悪いことではない』と教えつづけることだと思います」。
著者は、「夢はかなうとは限らない」と子どもたちに教えています。「少なくとも私は子どもたちに対して『夢はかなうものだ』と教えることはありません。ただし、夢を持つことを否定するわけではありません。私は、ことあるごとにこう伝えています。『夢はかなうとは限らないけど、夢に向かって走り出した人にしかチャンスはやってこない』」。
「人のせいにしない、主体的に課題解決に挑むことができる子。違いを尊重し、地道な対話を通して、合意形成をはかることができる子。・・・(こういう子に育てるために)まず変わらないといけないのは、子どもの教育に関わるすべての大人です。つい人のせいにしてしまう癖を改め、主体的に考え、判断し、行動を起こす。自律した大人になる。つまり、自律的な子どもを育てるためには、大人が社会に対して当事者意識をもっていなければならないのです」。
子どもの教育には、大人の役割が大きいことを再認識させられました。