榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

身近な野鳥30種の食生活は、驚くことばかり・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1813)】

【amazon 『身近な鳥のすごい食生活(カラー版)』 カスタマーレビュー 2020年3月31日】 情熱的読書人間のないしょ話(1813)

巣材を運ぶスズメ、賑やかに鳴いているスズメの若鳥、コゲラ、ムクドリをカメラに収めました。ソメイヨシノも頑張っています。我が家のムスカリ五兄弟です。因みに、本日の歩数は10,909でした。

閑話休題、『身近な鳥のすごい食生活(カラー版』(唐沢孝一著、イースト・プレス)は、類書とは異なる特徴を3つ備えています。

第1は、バード・ウォッチャーが目の色を変える滅多に見られない野鳥ではなく、身近な野鳥30種を取り上げていること。

第2は、著者の体験を中心に、野鳥たちの驚くべき食生活が紹介されていること。

第3は、食生活の生々しい実態が鮮明なカラー写真で示されていること。

「スズメは、(サクラの)花の蜜腺付近を嘴で千切って蜜をなめるのだ。花にとってははなはだ迷惑である。花粉も運ばず、蜜だけ横取りされてしまう。これを盗蜜という」。「盗蜜」という言葉を初めて知りました。

「銀座のツバメは雄のミツバチだけを捕食している可能性がある。もしそうだとしたら、ミツバチの雌雄をどのように識別しているのだろうか。鳥類は紫外線を見分けられる。浅間茂氏に紫外線撮影してもらったが、紫外線では雌雄の区別ははっきりしないという」。

「(ハシブトガラスが)衝撃的なのは、人の死体も食べることだ。冬山で遭難した遺体が春の雪解けとともに露出してくると、最初にカラスがつつくのは目玉だと言われている」。

「ハシボソガラスの貯食に関しては、善光寺境内での興味深い研究がある。いろんな食べ物を用意してハシボソガラスに与えたところ、あちこちに食べ物を隠し、貯食場所は計114カ所を記録した。その後、その貯食した食べ物を取り出して食べる様子を観察したところ、ウインナや卵焼き、さつまあげなどの生ものは3日以内に食べた。クルミのような保存食は平均で13.6日後、中には2ヶ月間も保存したものもあったという(後藤1984)。貯食した場所を記憶するだけでなく、食物の賞味期限を合わせて記憶していたことになる」。

「ヒヨドリなどの鳥が花や葉などを食べた時にできる嘴(ビーク)の痕跡を『ビークマーク』という。ビークマークは、モクレンやコブシの花弁、アブラナの葉などをついばんだ時に花弁や葉にくっきりと残る」。我が家の庭師(女房)も、庭のモクレンの花弁にヒヨドリが残したビークマークを見ています。

「特に栄養価が高い葉とも思えないのだが、なぜこれほどまでに(ユズリハの葉を)食べるのだろうか。漢方ではユズリハの樹皮と葉を『駆虫剤』に利用している。ヒヨドリも駆虫剤として利用しているのかも知れない」。

「なぜかムクドリが柑橘類を食べるのを見たことがない。なぜだろうか。実は、ムクドリには柑橘類に多く含まれているショ糖(スクロース。砂糖の主成分でもある)をブドウ糖と果糖(フルクトース)に加水分解する酵素(スクラーゼ)がない。そのため、ショ糖を分解できず、小腸から吸収できないのだ。ちなみに柑橘類の果汁成分の6割はショ糖である。一方、ムクドリはカキやブドウ、サクランボなどはよく食べる。ムクドリが吸収できるブドウ糖や果糖を多く含んでいるからだ」。本書のおかげで、ムクドリが柑橘類に寄り付かない理由がはっきりしました。

「(ハクセキレイが)耕運機(による田起こし)や他の動物の動きを利用して獲物を得る方法を『オートライシズム』という」。

「メジロの嘴や舌は吸蜜のために特化している。嘴が細長いため花の奥に差し込みやすい。舌の先端が極細のブラシ状になっており、一瞬にして蜜を吸い取ることができる。さらにおどろくのは、舌が管状であり蜜を吸い込みやすくできている」。

「時にはエナガ、ヤマガラ、ヒガラ、メジロ、コゲラなどが(シジュウカラの)群れに混じり、一緒に行動する。これを混群という。混群を形成することにより、それぞれの鳥がそれぞれの流儀で天敵を警戒するため、群れ全体では危険をいち早く察知できるようになる。と同時に、餌のありかや採餌方法などを互いに学習し合うこともできる」。この説明で、私もしばしば見かける混群の理由が分かりました。

「コゲラは虫ばかり食べているイメージが強いが、(サクラで吸蜜するように)甘党でグルメの一面を持っている」。

「(イソヒヨドリの)雌は地味な色彩ではあるが雄だけでなく雌も美しい声でさえずる」。イソヒヨドリの特徴ある囀りは何度か耳にしたことがあるが、雌も囀るとは知りませんでした。

モズのハヤニエの写真の中に、幼体でなく成体のミシシッピアカミミガメが含まれていることに驚きました。

「(ツグミは)繁殖地では美声でさえずるが、日本では越冬中なのでさえずらない。ツグミの名の由来は、夏至を過ぎると口をつぐんで鳴かないからだと言われている」。この点については、著者に尋ねたいと思うことがあります。2020年1月16日に、千葉・柏の「こんぶくろ池自然博物公園」で、ツグミがキョキョキョキョと、よく響く大きな声で囀っていたのですが・・・。

「(カワセミが)自分で魚を食べる時は、ひれが喉に引っかからないよう頭から呑み込む。雄が雌へ求愛給餌したり、雛へ給餌する場合は、魚の尾をくわえ頭を差し出して与える。ひれが喉に引っかからないようにという思いやりである。ザリガニの場合は、はさみが喉に引っかからないよう尾側から呑み込む」。

「コサギの追い出し漁。足で水をゆすり魚やザリガニを追い出す」。このコサギの追い出し漁はよく目にするが、足の震わせ方が巧みで、見飽きません。

「アオサギは大物食いである、と同時に食性の幅がとても広い。呑み込める動物なら何でも食べてしまう。ネズミも食べるし野鳥も食べる。外国の事例では子ウサギを丸呑みにしている」。