榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

女性ニュース・キャスターの栄光と挫折・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1850)】

【amazon 『ニュース・キャスター ――ジェシカ・サヴィッチの栄光と挫折』 カスタマーレビュー 2020年5月7日】 情熱的読書人間のないしょ話(1850)

ハゴロモジャスミン(白色)、マンデヴィラ(桃色)、シンビジウム(白色)、プロテア(花は小さく白色、薄い赤みを帯びているのは総苞)の花が咲いています。今宵は満月です。

閑話休題、『ニュース・キャスター ――ジェシカ・サヴィッチの栄光と挫折』(グゥエンダ・ブレア著、岸野郁枝訳、JICC出版局)は、1983年に35歳で自動車事故死したNBCの美人ニュース・キャスター、ジェシカ・サヴィッチのジェットコースターのように激しく目まぐるしい浮き沈み人生に迫った伝記です。

米国テレビ業界で一際強烈な光芒を放った女性キャスターの目覚ましい成功と悲劇的な没落は、実話だけに迫力があり、読み応えがあります。

知的で、野心的で、美貌に恵まれたサヴィッチは、報道記者として地方のニュース番組でいくつかの成功を収めた後、1977年に30歳でNBCに採用され、テレビ・ニュースの激烈な競争場に投げ出されます。夜のプライム・タイムの報道番組の初の女性アンカーとして抜擢された彼女は、そのカリスマ的な魅力で視聴率を驚異的に上昇させ、他局の番組を圧倒します。ところが、そのほとんど栄光を掴んだかに見えた時には、没落の影が忍び寄っていたのです。

何回もの、いずれも短く終わった結婚、長年続いた不倫関係、堕胎、レズビアン、有力なライヴァルの出現――公私共に神経をすり減らし、コカインやアンフェタミンを常用したため、奇矯な行動が目立ち始めます。

そして、遂に、最悪の事態が起こります。全国ネットの生放送のテレビ・カメラの前で、43秒間、まともな言葉を発することができず自失するという大失態を演じてしまうのです。自動車事故で生涯を閉じたのは、その3週間後のことでした。

テレビ業界の食うか食われるかの熾烈な競争と、歪んだ価値観が生々しく描き出されているが、日本のテレビ業界は大丈夫なのでしょうか。