榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

中国の悪女は、やることが何とも酷過ぎる・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1852)】

【amazon 『中国列女伝』 カスタマーレビュー 2020年5月9日】 情熱的読書人間のないしょ話(1852)

ユリノキ(黄緑色)、キリ(薄紫色)、トチノキ(白色)、ベニバナトチノキ(赤桃色)の花をカメラに収めました。我が家の隣の公園で、理由は分からないが、落下しているカワラヒワの巣(長径11.5cm)を見つけました。我が家の庭で、女房が気に入っている小さな桃色のバラが咲き始めました。

閑話休題、『中国列女伝――三千年の歴史のなかで』(村松暎著、中公新書)には、中国歴史を彩った貞婦、孝女も登場するが、やはり注目してしまうのは、悪女、妬婦、美女たちです。

傾国の美女としては、周の幽王に愛された褒姒の事例が挙げられています。「褒姒はすこぶるつきの美人だったが、どういうわけか、さっぱり笑わなかった。となれば笑顔を見たくなつのが人情というもの。幽王、百方手をつくしたが、どうしても笑わない。そこで思いついたのが烽火(のろし)と太鼓のことだった。王は敵が攻めてきたら烽火を上げて合図をすることにしていたのである。そこである日、この烽火を上げてみた。諸侯、すわ一大事とばかり王宮に駈けつけたが、どこにも敵が見えない。その狐につままれたような顔つきが面白かったのだろう。褒姒が大いに笑った。味をしめた幽王は大喜びで、ちょいちょい烽火を上げたので、しまいには諸侯も本気にしなくなってしまった。・・・(叛乱軍が攻めてきた時)王はさっそく烽火を上げて兵を召したが、もはやだれも信用していないから、一兵も至らず、王は驪山のふもとで殺され、褒姒はとりこにしてつれ去られてしまった」。男の愚かさを思い知らされる話ですね。

漢の呂后のライヴァルに対する仕打ちは強烈です。「(夫の)高祖が死ぬと、呂后は待っていたように(高祖が寵愛した)戚夫人母子の料理にとりかかる。まず戚夫人を宮中の牢である永巷に幽閉し、そのうえでその子趙王如意を任地から都へ召し出す。・・・(呂后は部下に)如意に毒薬を盛らせた。・・・次にはいよいよ戚夫人である。まず手と足を切り落し、眼をえぐり、耳を薬でつんぼにして、便所にころがして人彘、つまり人豚と名づけた。これでもか、これまでか、というわけである。それも、自分ひとりで楽しむのは惜しいと思ったのだろうか、(息子の)恵帝を呼んでこの人彘を見にいかせた。恵帝はそこにころがっている人の形らしいものを見ても、なにものだかわからなかった。人にたずねてみて、はじめて戚夫人であることを知った。帝は慟哭した。このために病気になって、一年あまりも起きることができなかった」。

唐の則天武后も、残酷なことにかけては呂后に負けていません。「永徽六年、武昭儀(則天武后)は皇后になった。前皇后王氏と蕭淑妃は、『毒殺をはかった』という罪名で別院に幽閉された。・・・(彼女たちが高宗にここから出してほしいと泣きついたことを知った)武后は大いに怒って人をやって王氏と蕭氏を杖で百ずつ打たせた。そのうえで、『あの婆あどもを骨まで酔わせてやるがよい』といって、二人の手足を切断し、酒甕のなかに漬けさせた。数日にして死んだ。その死体をまた斬らせた。追打ちであるだけに、呂后よりもいっそう残酷である」。

何とも恐ろしい一冊です。