榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

新旧さまざまな道が交じり合う「多叉路」を歩いてみよう・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1971)】

【読書クラブ 本好きですか? 2020年9月6日号】 情熱的読書人間のないしょ話(1971)

ノシラン(写真1、2)が花を咲かせています。メディニラ・スペキオサ(写真3~5)が花と実を付けています。ガマ(写真6、7)の穂が風に揺れています。我が家の塀をスナゴミムシダマシ属の一種(写真8)が這っています。キッチンの曇りガラスに張り付いたニホンヤモリが、獲物の白い小さなガに素早く忍び寄り、咥える瞬間を目撃しました。

閑話休題、『東京「多叉路」散歩――交差点に古道の名残をさぐる』(荻窪圭著、淡交社)は、東京の「多叉路」散歩のガイドブックです。

「わたしが心を惹かれているのが『道』だ。特に古くからの道。東京、特に武蔵野台地と呼ばれる皇居より西側の台地は小さな谷地が無数にあるため、昔の人はなるべく無駄に上り下りをしなくてすむよう、水が集まって不安定な谷地はあまり歩かないよう工夫して道を通していた。すると当然、微妙にカーブした道路がいくつもできる。それが味わい深い。そういう古い道筋は歴史散策に向いていると思う。交通量も信号も少ないし、神社や野仏やかつての商店街や巨大な旧家に出会えるので、歩いていて楽しいのだ、史跡巡りも当時の道筋を辿ると、より歴史を足で感じ取れてよい。・・・古い道筋を(おそらくはやむを得ず)温存しながら自動車に適した新しい道を追加し、水路も暗渠化して道路にし、気がついたら複雑な多叉路がいくつもできたのだ。本書はそんな東京に無数にある多叉路からいくつかをピックアップし、交差する道が多い順に並べ、多叉路化の歴史を掘り下げつつ、歴史散歩のネタにしてもらえればうれしいなと思って書いたものである。地図上で見るといくつもの道が重なった単なる交差点も、歴史を遡ると、各時代の道が重なっていて面白いのである」。

「多叉路の面白さはその歴史的重層性にあると思う。鎌倉につながった中世の道、江戸時代の地形を生かした道、近代の区画整理の道、昭和以降の自動車が快適に走れる道、さらに水路跡の暗渠道や水道管の上に敷かれた水道道路、各時代の異なったニーズで作られたそんな道がたまたま一カ所で重なると、味わい深い多叉路ができあがる」。

「足立区千住――高低差がミソの変則八叉路」は、1年4カ月前に、地元の史跡研究会に参加して、終日歩き回った所です。

「杉並区大宮――大宮八幡宮は交通の要衝だった」は、私が参加している「杉並お散歩の会」で何度か訪れたことがあります。

「新宿区、文京区、千代田区――3区の境にできた飯田橋六叉路」は、私が勤めていた会社があったので、馴染み深い所です。

これまで行ったことのない多叉路も、本書を携えて訪れたいなあ。