榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

日本では世界に先駆け、江戸時代中期に金本位制が誕生していた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2035)】

【amazon 『江戸の金本位制と水野家の幕閣たち』 カスタマーレビュー 2020年11月9日】 情熱的読書人間のないしょ話(2035)

ヒナバッタ(写真1)、キンケハラナガツチバチの雄(写真2)、ニホンカナヘビ(写真3、4)をカメラに収めました。サルビア・レウカンサ(メキシカンブッシュセージ、アメジストセージ。写真5~8)、サルビア・スプレンデンス(写真9)、ローズマリー(写真10)、ツキヌキニンドウ(写真11)、デュランタ(写真12)が花を咲かせています。

閑話休題、『江戸の金本位制と水野家の幕閣たち』(水野忠尚著、東京図書出版)のおかげで、江戸時代の政治と経済の密接な関係について理解を進めることができました。

江戸時代中期には「増産された米の生産に対して通貨は、それに見合うほど十分に供給されず、結果的にコメの値段は低下せざるを得ませんでした。米が収入の全てである大名・武士は、次第に借金生活に追いやられ、富豪、富農、商人を中心とする世界へ世の中は変わっていきます。そこで幕府は、貨幣の金銀の含有率を引き下げて、通貨の供給を増やすことにします。ところが大坂をはじめ関西・西国は、取引を銀貨で、しかも目方で商いました。江戸を中心に関東・東国は、目方ではなく額面で取引される金貨(小判等)でおこなうので、使い方を含めて通貨は2つの世界に分かれてしまいます。銭は両方の世界で日常の小口取引用に補助通貨として機能しましたが、金貨・銀貨間では、絶えず両替の負担が生まれ、新通貨の発行の都度、そして作物の出来・不出来、商品の人気・不人気などにより、また場所により交換率は変動します」。

「そこで田沼時代に勘定奉行川井久敬などの献策を受けて、水野忠友に始まる3代にわたる水野家一族の勝手掛老中が、世の中を刺戟しないように、目立たないように2つに分かれていた通貨の世界を、実質1つに、小判を基準とする金本位制に誘導し、新しい通貨体系を築き上げます。この試みは、当時の最先端のイギリスよりも30年以上も早く、本格的に使われ出したのは、イギリスとほぼ同じ時期の1810年代であり、世界に先駆けて金本位制にたどり着きました」。水野家3代とは、水野忠友、水野忠成(ただあきら)、水野忠邦を指しています。

「日本は金本位制になりましたが、それから更に半世紀経っても、欧米では依然として金銀複本位制が主流でした。日本の開国、通商条約の締結に絡んでもう一つ波乱が起きてしまいます。強引な米国のハリスが中心になり、欧米の列強によって、せっかく補助貨幣となっていた日本の銀貨は否定されてしまいます。多大な犠牲を払い、何とか明治維新にたどり着いた日本の通貨制度」が俯瞰的に論じられています。

「いわゆる田沼時代と呼ばれる、時代の変化を捉えた、前例にとらわれない新しい取り組みを示す政策が多くあった。米作り一筋の農業から、多様化、商業化、新地開拓など新しい流れを取り込もうとするものであった。・・・水野忠友は、目立たない地味な人柄とも見えるが、田沼意次政権の中心的な人物であり、田沼政権の副総裁とも言うべき地位にあった。忠友の役割は、財政などを扱う勝手掛という重要な地位にほぼ一貫して就いていたことにある」。

「力の支配を中心とする政治空間」と「売買の損得が支配する経済空間」という2つの世界、さらに、中世から近世への経済発展に伴い重要性を増した「両方の空間を繋ぐ貨幣空間」を生き生きと描き出すことに、本書は成功しています。