榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ベニシアの物静かな語りは哲学的な香りがする・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2145)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年2月26日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2145)

ベニバナトキワマンサク(写真1、2)が咲き始めました。ナノハナ(セイヨウアブラナ。写真3~5)が咲いています。我が家の庭の餌台は、今日も、メジロ(写真6~8)、シジュウカラ(写真6、7、9~11)たちで大賑わいです。

閑話休題、『ベニシアさんの四季の庭』(DVD『ベニシアさんの四季の庭』<菅原和彦監督、ベニシア・スタンリー・スミス、梶山正出演、NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン>)は、2013年に制作された、心に沁みるドキュメンタリーです。

京都・大原の緑溢れる自然に囲まれた古民家での、イギリス出身のベニシア・スタンリー・スミスと、9歳年下の梶山正の生活が淡々と紹介されていきます。

控えめな音楽をバックに、四季の移り変わりの美しい風景、ベニシアの庭仕事や料理、夫婦の会話、地元の友人たちとの交流――が、温かいタッチで描かれていきます。とりわけ印象的なのは、常に微笑みを絶やさないベニシア自身の物静かな語りです。日本語の語りもいいのだが、リズム感のある格調高い英語が心地よく響きます。

●日本に来たのは、ついこの前のことのようです。
●振り返ると、困難もありましたが、何事にも理由があったのだと思います。
●人生はどこまでも続く踏み石をひとつひとつ渡っていくようなもの。
●生き方、暮らし方は、ひとりひとりが創り出す下移出作品。・・・古いものを今の暮らしに活かすセンスが問われるところです。
●古いものは私たちの家に美を添え、やがて地球の土へと還っていきます。古いものをかっこよく!

二人が結婚し、悠仁が生まれて暫くしてからのことだが、正が別の女性、フランス人の女性を好きになって、出ていってしまいます。
●あの時は多分、私にとって一番ショックだったね。本当に正と私、仲良かったから・・・。15キロ痩せたのね。
●私は嘆き、悲しみ、絶望しました。私の帆は風を奪われたのです。でも、同じように、正も苦しんでいたのでしょう。

正はフランス行きを思い止まり、戻ってきます。
●それからの数年間はつらい時期でした。正の心はどこかに行ったまま。
●許しとは、過失を手放すことと悟りました。誰もが心の中に平安を求めています。私はいつも人生を悪い方向から見るのではなく、そばにある美しいものに目を向けて、前向きでいるよう努めています。
●古いことわざがあります。「大切なのは、何が起きたかではなく、それにどう対処したかである」。
●私たちは年をとりますが、庭にいるときの心はいつも変わりません。真の贈り物は「心の庭」にあるのです。それぞれの心の深いところに、一瞬一瞬のなかに。

ベニシアの語りは哲学的な香りがする――私の率直な感想です。