葛飾北斎のデザインをさまざまな切り口から解説した一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2224)】
アメリカハナズオウ‘シルヴァー・クラウド ’(写真1、2)の葉は、淡桃色→白色→中心部が緑色へと変化します。チガヤ(写真3)の穂が風に揺れています。イロハモミジ(写真4)、ソメイヨシノ(写真5)、ブルーベリー(写真6)、カジイチゴ(写真7)が実を付けています。ヤマボウシ(写真8、9)、オオキンケイギク(写真10)、ニガナ(写真11)、ペチュニア(写真12、13)が咲いています。
閑話休題、『北斎のデザイン――冨嶽三十六景から北斎漫画までデザイン視点で読み解く北斎の至宝』(戸田吉彦著、翔泳社)は、構図、色彩、意匠、カメラ・アイ、季節と人間、幾何学的形態、線の魅力という7つの切り口から葛飾北斎の作品を解説しています。
個人的に、とりわけ勉強になったのは、構図の部の「正面に立ちはだかり隙間から見せる『シースルー』」です。「北斎の場合、大向こうを唸らせるドラマチックな構図ばかりではありません。わざと主題を隠して見せるシースルー効果のテクニックも使います。鑑賞者は遮られた先を注視し、主題に対して普段以上に関心を高めます。広告では『ティーザー手法』と言いますが、北斎には鑑賞者の意識を操る一面があります」。この例として、「冨嶽百景 写真(=写実)の富士」、「冨嶽三十六景 甲州三嶌越」、「冨嶽三十六景 武州千住」、「冨嶽三十六景 東海道程ヶ谷」、「富嶽百景 村雨の不二」、「富嶽百景 網裏の不二」、「富嶽百景 竹林の不二」、「富嶽百景 柳塘の不二」が挙げられています。
カメラ・アイの部の「演出をリアルにする一瞬の『シャッター・チャンス』」も勉強になります。「21世紀に入りフランスの写真家が、『神奈川沖浪裏』の波の正確さを超高速撮影で証明して話題になりましたが、北斎の目はシャッター・チャンスを求め動くもの全てに向けられました。さらに北斎には、それにふさわしい舞台を虚構で用意する演出力も備わります。・・・虚実入り混じる絵は北斎研究者を泣かせます」。この例として、「狂歌絵本 東都名所一覧・境町」、「冨嶽三十六景 相州仲原」、「冨嶽三十六景 従千住花街眺望ノ不二」、「冨嶽三十六景 隅田川関屋の里」が挙げられています。
同じくカメラ・アイの部の「遠くを引き寄せ不要なものを切る『望遠レンズの視点』」にも目を惹きつけられました。「(驚くべきことに)対象物に焦点を絞り、背景をぼかし視野(画角)を狭め、狙いを絞るレンズ特性に気づいた北斎は、レンズを換えるように自分の眼の前の景色を狙いによって描き分け、さらに意識は近現代の画家と同様の進化をします」。この例として、「冨嶽三十六景 東都浅艸本願寺」、「冨嶽三十六景 甲州石班沢」、「冨嶽三十六景 諸人登山」、「富嶽百景 八堺廻の不二」、「富嶽百景 辷り・不二の山明キ」、「冨嶽三十六景 武州玉川」、「富嶽百景 さい穴の不二」が挙げられています。
同じくカメラ・アイの部の「ルーペで観察するような『マクロレンズ効果』」も注目に価します。「北斎の魅力は風景画だけでなく、身の回りの花や虫、魚を活き活きと描き出す正確な描写にあります。・・・北斎のクロースアップ描写はまるで『マクロレンズ』を覗くような楽しさがあり、細部の表現から魅力が放たれています」。この例として、「大判錦絵 桔梗に蜻蛉」、「大判錦絵 菊に虻」、「富嶽百景 夢の不二」、「北斎漫画 仏御前嵯峨野に祇王祇女を問う」、「北斎漫画 八艘飛之図」が挙げられています。
季節と人間の部の「笑いと愛情にあふれる『人間味』」も見逃すわけにはいきません。「北斎がユーモアを愛し人情にも通じていたことは数々の絵から広く知られていますが、滑稽なだけでなく年齢・職業・性別による仕草の違いまで鋭く観察し、正確に表現したところに、フランス印象派でデッサンを重んじたドガが感嘆し、また名だたる画家達を驚かせた北斎の真骨頂があります」。この例として、「冨嶽三十六景 駿州江尻」、「冨嶽三十六景 登戸浦」、「北斎漫画 風」、「北斎麁画 野分」、「冨嶽三十六景 登戸浦」、「肉筆画 潮干狩図」、「摺物 潮干狩」、「千繪の海 下総登戸」、「摺物 花見」が挙げられています。
私は絵は描かないが、写真を撮るときの重要なヒントが得られました。