榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

まるで絵巻を眺めるかのように、複雑な享徳の乱を俯瞰できる一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2240)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年6月1日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2240)

セイヨウキョウチクトウ(写真1~6)が咲いています。ヤマモモ(写真7)が実を付けています。

閑話休題、『図説 享徳の乱――新視点・新解釈で明かす戦国最大の合戦クロニクル』(黒田基樹著、戎光祥出版)は、応仁の乱に先立つ関東の内乱・享徳の乱の足掛け29年に亘った経過が丹念に辿られています。図説が活かされているので、まるで絵巻を眺めるかのように、複雑な乱の全体像を俯瞰できます。

享徳の乱というのは、8代将軍・足利義政の時に、鎌倉公方・足利成氏と、足利将軍家と結んだ関東管領の山内上杉氏・扇谷上杉氏が、関東地方一円の武士団たちを巻き込んで争ったものです。

個人的には、とりわけ、3つのことが印象に残りました。

第1は、常陸の真壁を領した真壁氏が登場することです。我が祖先の塙世城主・榎戸氏は真壁氏の重臣だったからです。

第2は、私の好きな太田道潅が活躍することです。道潅は、扇谷上杉氏の家宰として縦横無尽の働きをするが、主君・上杉定正に謀殺されてしまいます。

第3は、我が家から車で15分ほどの前崎(まえがさき)城跡に言及されていることです。「道潅の弟六郎資常が守備していたが、道潅の死を受けて勢いを増した千葉氏によって陥落させられた。このとき、六郎がこの城で討ち死にしたという。太田一族の無念が詰まったこの城も、現在は本丸部分だけが城址公園として遺され、周囲に巡らされた見事な土塁が保存されている。千葉県流山市」。私は、折に触れて、この城址を訪れ、道潅の事績を偲んでいます。