榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

新型コロナウイルスは中国の武漢ウイルス研究所から流出した可能性が非常に高い・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2298)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年7月28日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2298)

カノコユリ(写真1、2)、オニユリ(写真3)、オミナエシ(写真4、5)、ワレモコウ(写真6)、ルリヤナギ(写真7)が咲いています。モミジバフウの実(写真8)が落ちています。我が家のモクレンにニイニイゼミの雄(写真9)が、網戸にクサギカメムシ(写真10)がやって来ました。どちらも女房が見つけました。

閑話休題、『学者の暴走』(掛谷英紀著、扶桑社新書)は、新型コロナウイルスは中国の武漢ウイルス研究所から流出した可能性が非常に高いと主張しています。「これが事実として確定すれば、科学史上最大のスキャンダルになる。ところが、その真相究明をしようとする学者は非常に少ない。300万人以上(2021年4月末時点)の死の原因に全く関心を寄せない学者の姿は、学問および学者の劣化を象徴するものである」。

「武漢ウイルス研究所が、そこ(1500km離れた棲息場所)からコウモリのコロナウイルスを大量に採取しており、それを実験試料としていたからである。その研究は多数論文化されて学術誌に掲載されている。では、コウモリのコロナウイルスを使ってどのような研究がなされていたのか。コウモリのコロナウイルスは、2002年から03年にかけて流行したSARSの起源になったことで知られる。そのSARSウイルスの遺伝子を組み換えて、新しいウイルスを作る研究が行われていたのである。この種の研究は機能獲得研究と言われている。具体的には、ウイルスの人間への感染力を強めたり、人間への毒性を増すような研究が行われていた。・・・実質、生物兵器の研究だった可能性は否定できない。実際、武漢ウイルス研究所の研究には、中国人民解放軍が関与していたことが分かっている。もちろん、それだけでは単なる状況証拠でしかない。ところが、証拠はそれだけではない。実は、ウイルスの遺伝子(塩基)配列のレベルで、人工的改変を疑わせる部分が存在するのである」。

著者の主張が論理的で説得力があるだけでなく、反論に対する論拠も堅牢です。「新型コロナウイルスに人工的改変がないという議論は、科学的に見て根拠は薄弱であり、WHOの調査団の報告書が出た時点で、人工的改変の可能性が極めて低いとは決して言えない状況であった」。

癒着する学者たちが槍玉に挙げられています。「WHOの調査団として米国から参加したのはピーター・ダシャックという人物である。彼は、ウイルス学者として武漢ウイルス研究所の石正麗らと共同研究を行ってきたことで知られる。その意味で、彼には武漢ウイルス研究所を査察する上で明らかな利益相反がある。彼の立場からすれば、ウイルスが研究所から漏れたということになれば、これまでのように中国の研究所を利用して機能獲得研究を続けることができなくなる。研究予算もとれなくなり、論文も書けなくなる。研究者として厳しい立場に追い込まれる。その状況で、公平な査察を行うことは全く期待できない。・・・そもそも、ダシャックについては、これまでも科学者としての公正さを疑わせる報道が何度かされている。2020年2月、ダシャックを含む科学者たちは、学術誌『ランセット』上において、新型コロナウイルスが研究所から漏れたとする『陰謀論』を批難する声明を出した。しかし、2021年1月18日の『デイリー・コーラー』のネット記事によると、彼の広報担当は『ウォール・ストリート・ジャーナル』の取材に対し、この声明は中国の研究者を守るために出したと答えたと報じられている。これは完全な癒着である。このように中国の研究者と癒着関係にある研究者を調査団の一員として派遣するWHOは、その公正さを疑われて当然である」。

「しばしば、中国は証拠を隠滅しているので、これから調査をしても実験室からの流出を証明するのは難しいという人がいる。しかし、武漢ウイルス研究所の全職員の免疫(T細胞を含む)を調べることは可能である。全職員のウイルスへの感染履歴が分かれば、流出ルートが特定できる可能性がある。この証拠は職員を殺さない限り隠滅できない。この調査に応じない限り、中国の研究機関に属する研究者を学会や学術誌から締め出すことは、政治とは独立に科学界だけで対応可能である」。

「2021年5月に入り、大きな動きがあった。元『ニューヨーク・タイムズ』の科学記者ニコラス・ウェイドが、原子力科学者会報に新型コロナウイルスが研究所からの流出を起源とする可能性が高いことを示唆する1万ワードを超える記事を発表した。続いて、権威のある学術誌として知られる『サイエンス』誌で、新型コロナウイルスの起源について研究所からの抽出の可能性も含めた調査を求める18人の研究者連名のレターが掲載された。この著者にはアリーナ・チャン博士や、石正麗の共同研究者であったノースカロライナ大学のラルフ・バリック教授も含まれる。今後、真相究明に向けた動きが加速することが期待される」。

新型コロナウイルスの起源の真相が明らかにされる日の一日も早いことを祈るや切。