いい仕事は必ず、誰かが見ていてくれる・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2328)】
東京・文京の小石川後楽園は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、入園には整理券の予約が必要です。静寂に満ちた園内を独り占めすることができました。因みに、本日の歩数は16,331でした。
『遺言――野村克也が最期の1年に語ったこと』(飯田絵美著、文藝春秋)を読んで、とりわけ3つの言葉が印象に残りました。
その1は、「敵がいて当たり前」です。
<言いたいやつには、言わせておけ。むーだ。時間の無駄だよ。おまえ、いつくや? 40歳、過ぎたんやろ。周りの人の言うことなんて、気にするな。言うたやろ? 『35歳を超えて敵がいないということは、人間的に見込みがないことである』と。敵がいて当たり前>。
その2は、「不器用なヤツの方が、最後は勝つ」です。
<苦境に立たされたとき、プラス思考になれる人と、マイナス思考になってどんどん深みにはまって落ち込んでいく人の2通りがある。人間は、『思考』と『感情』という二大要素を持っている。そこの使い方だよ。人は感じるからこそ考える。やっぱり、考え方というものが行動の起点になってくる。考え方が取り組みにつながり、それを実行していくことで、人間はつくられていく。つまり、思考が己の人生を決定するんだ。『考える』ことは誰にでもできる。人間は、そういう意味ではみんな平等なんだよ。だから、苦境に立たされたとき、どう感じてどう考えるのか。そのとき、思考と感情がどう働くのか。それだけの勝負なんだ。不器用な人間は苦労するけど、徹してやれば、器用な人間より不器用なヤツの方が、最後は勝つよ>。
その3は、「いい仕事は必ず、誰かが見ていてくれる」です。
<自分を支えてきた言葉? そりゃ、コレしかない。『めくら千人、めあき千人』や。・・・いいか、この言葉の意味を、忘れるなよ。たとえ、自分のことを見てくれない人が1000人いても、見ている人だって1000人いる。自分が『これだ』と信じたことをこつこつやっていれば、『あー、誰も見てくれていないや』と投げやりな気持ちになることもあるけど、それでも続けていれば、誰かが見てくれている。それも、思ってもみなかった人が、な。必ずそういう人が現れるぞ。いい仕事は必ず、誰かが見ていてくれる。だから、人間はどんなときにも手を抜いてはいけないんだ。この言葉を忘れるなよ。きっとそう思う日がやってくるから>。この言葉は、人生にもがいていた時期の野村克也が尊敬する評論家・草柳大蔵を訪ねた時、受けた助言です。私も、長い企業人時代に、この言葉のとおりだと実感した経験が、何度かあります。
野村というのは、実に、よく学ぶ人、学んだことを素直に実行する人、そして、それを実行し続ける人だったというのが、私の見方です。