榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

88歳の森村誠一の手になる、人生の第三期(人生の決算期)を前向きに生き切るための指南書・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2400)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年11月12日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2400)

キダチダリア(コウテイダリア。写真1~3)、ギョリュウバイ(写真4、5)、サザンカ(写真6~9)、ヤブツバキ(写真10)が咲いています。ミミズ(写真11)たちが干からびて死んでいます。

閑話休題、『老いる意味――うつ、勇気、夢』(森村誠一著、中公新書ラクレ)には、大いに勇気づけられました。

●私は百歳まで現役を続けるつもりである。・・・生涯現役を貫くつもりだ、百歳まで生き続ける、ということも決意している。もちろん、百歳まで生きると決めたからといって実際に生きられるかはわからない。しかし、心構えだけはあらかじめ持っておく必要がある。そうでなければ、動揺することもなく百歳を迎えられるはずがないからだ。

●老人たちよ、大志をいだけ――生きがいとは何か。最も難しい設問である。幸福と似ているようであるが、似て非なるものである。幸福の頂上にいるような人でも、生きがいのない人生にはどこか満たされないものを覚える。・・・人生の第三期にもなれば、人の言いなりになっているのではなく『自分はどうしたいのか』ということに忠実に生きていけばいい。人目は気にせず、何かしらのことにチャレンジしていく。「Boys, be ambitious」ならぬ「Old men, be ambitious」でありたい。歳をとったら何もできなくなるのではなく、なんでもできるのである。病や老いに打ちのめされていることはない。病や老いに寄り添いながらも目線を高くして生きていきたい。

● 老齢になって無理をしすぎる必要はないが、安楽な生活にあぐらをかいているよりは、精神の自由を求める部分は持っておきたい。生きがいとは、「自分はたしかに生きている」という実感である。安楽な生活は飽きやすいのに対し、そういう実感のある生活は飽きることがない。

●緊張感や気力というものは筋肉に似ている。体を動かさなくなれば筋肉はすぐに衰えていくように、緊張感を持たなくなり無気力状態になってると、心も脳も老いていく。・・・肉体が朽ちていくのを待つだけになるので、そこに至らないように気持ちを引き締めておくことが大切になる。高齢者になると、話しかけてくれる人が減っていきやすいだけでなく、本人も話しかけられるのを面倒くさがる面がある。人と話をしなくなると、緊張感を保つのは難しい。・・・そうして社会とのつながりをなくさないようにすることでも老いは遠ざけられる。

●散歩は「小さな旅」である。散歩を始めた頃は、いちいちコースを変えるのが面倒に感じられたり、歩いているだけなのは退屈に感じられることもあるが、工夫を重ねれば楽しみが増える。歩いていると、四季の移ろいを感じ取りやすいのがまずいい。同じ時刻に歩いていても、春夏秋冬それぞれで道の表情は違ってくる。天候によっても別の横画を見せてくれる。季節の変わり目などなら、一週間で町が大きく風貌を変えることもある。日本の四季はいいものだとあらためて実感される。・・・散歩などは、自分の健康を考える第一歩になることである。その手軽さからいっても、誰もが日常のなかに取り入れていいことではないだろうか。

●いまよりもっと体力をつけるとか、より健康になろうと目指すのでなく、老いるに従い「現状維持」を考えて、そのためのメンテナンスをしていく。・・・年齢を重ねれば、それ相応のガタはくる。筋肉や骨、脳や内臓に金属疲労が出てきて、老朽化していく。それはやむを得ないことだと受け止めて、衰えていく身体の劣化速度を抑えることを考える。そういう割り切り方が大切である。

●第二のスタートは、それまでの人生をリセットするチャンスである。六十歳、七十歳まで生きれば、いろいろなことがあるのが当然といえる。病気になったり家族との別離があったりするだけでなく、人によっては会社の倒産、交通事故、災害などに遭うこともある。予期していなかった不幸やトラブルが重なることもある。そうなると人間は、なかなか立ち上がれない。・・・考え方を変えてみてはどうか。現役からの引退は、過去との決別を意味する。いいことも悪いこともすべて過去の出来事として水に流す。それまでにあったことはリセットしてしまい、ゼロから始まると考えてもいい。続編やエピローグのつもりでいるのではなく「新章」にすればいいのである。

●「出会い」というものは、人生の第三期に入っても大切にしたい。人生は出会いの連続であり、出会いというものは三つに分けられる。第一が人との出会い。第二が文化との出会い。本や映画、音楽や絵画、舞台などがそうだ、第三が場所との出会いである。旅などがそうだが、引越しにより新しい町に住むことになるならそれも大きい。出会いによって、人生が方向づけられることもあれば、軌道変更されることもある。・・・それぞれの出会いは、いわば未知との遭遇である。出会いによって未来の可能性は無限に広がる。・・・人との出会いがあれば、新たな発見もある。自分とは違う考え方なども吸収できる。新たな趣味を教わることもある。そうしたことには年齢や性別は関係がない。自分の知らないことを知っている人、自分が経験したことのない体験をしている人たちに出会うことが大切なのである。そういう出会いをいつまでも求め続ける姿勢を持っていたい。

著者が今、一番気に入っている趣味は、「写真+俳句=写真俳句」とのことです。私は、「写真+書評=写真書評」を、長年、続けています。敬愛する人生の先輩のと似たような趣味を持てていることを嬉しく思います。