榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

書けない悩みを乗り越えようともがくプロの書き手4人の座談会の記録・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2464)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年1月15日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2464)

アオジの雄(写真1、2)、モズの雄(写真3、4)、ムクドリ(写真5)をカメラに収めました。エラリー・クイーンの『Yの悲劇』を読み耽っていたら、撮影助手(女房)が、ジョウビタキの雄(写真7、8)よ!と叫んだので、慌ててカメラを手にしました。この2週間に6度も、我が家の庭にジョウビタキの雄が出現していたのに、悉く撮影に失敗していたからです。因みに、本日の歩数は14,210でした。

閑話休題、『ライティングの哲学――書けない悩みのための執筆論』(千葉雅也・山内朋樹・読書猿・瀬下翔太著、星海社新書)は、書けない悩みを乗り越えようともがくプロの書き手4人の座談会の記録です。

「この本はそれぞれに固有の書けなさを抱えつつも。そのなかでいかに書くか、どうすれば楽になれるか。どうしたら書き終えられるかについて、千葉雅也、読書猿、瀬下翔太、そして山内朋樹の4人が縦横無尽に語りあい、あるいは論じたものだ。・・・目を凝らしてみてほしい。あなたのなかには、あなたの生の傍らには、あなたにしか束ねることのできない荒々しい言葉の渦がある。創造の源泉なんていう上品な喩えでは汲み尽くせないほとばしりが、激流が、濁流が渦巻いている。ぼくらはそう断言する。・・・書くこと、つくることをより自由に、気楽に、気にせずに、言ってしまえばもっと適当にやってしまうこと。ぼくらは、この時代の自縄自縛と凡庸さから、書くことを解放する! つくることを解放する!・・・書くこと、ひいてはなにかをつくることは、ようするに生きることだ。書くことは結局のところ自分自身と向きあい、その限界を認め、諦めることだし、これまでに受けてきた傷やわだかまり続けるしこりも含めて許すことだ。書くことの悩みは自分自身の生と深く結びついているがゆえに絡まりあっていて、表に出すのは恥ずかしく、涙なくして語ることはできない。しかしだからこそ、それを晒しあい、迎え入れるこの場には、底抜けに明るい笑いが満ちている」。

個人的に参考になったことを挙げてみましょう。

「なにかの話題について文頭に①,②、③とか書いてツイートしていると、エディタに書くよりも明らかに速く、多くの内容を出力できるように思います。同じことをエディタで書いたら、文と文が繋がっているか不安になって、『そして』とか『また』とかの接続詞が気になったり、文末処理に悩んだりして進まない。ツイッターだとそんな細かいことは忘れて、スラスラ書ける」。文章は飛躍していいというのです。

「ぼくも前は段落が長くて、『思想地図』に書いたときに東浩紀さんから、『ぼくの好みなんだけど』って言って『もうちょっとここ、段落分けたほうがいいよ』という指導を受けたことがありました。東さんはやっぱり読みやすさを考えて短くするんですよね。その影響を受けて、一時期『あ、もっとここ、段落切れるな』と意識するようにはなりましたね」。「段落が短くなったのは革命的な変化だとぼくは思っています。それによって多分、思考の展開そのものも変わったんだと思うんですよ。一段落が長いとそのなかで思考がうねるじゃないですか。それがあまりなくなって段落間で起こるようになったんじゃないか」。一段落を短くすべしというアドヴィスです。

「書くことにたいする欲望や幻想がないと書けないよなと感じたんです。たしかにこれまで断念する、諦めるという話をずっとしてきたけれど、これから書こうとする人にはなにかよくわからないざわつきや予感だけがあると思うんです。たしかにアプリの選択やルーティンの構築で書き進めることはできる。けれどそういう操作可能な水準を語る以前に、そもそも書くことへと衝き動かされる根本のところを拾いたいと思ったんですよ」。本書を読んで、私が一番驚いたことは、4人が、アウトライナーとかテキストエディタといった文書作成・編集ソフトウェアを重用していることです。私のようなプロでない書き手が言うのはおこがましいが、書きたいこととパソコンのWordがあれば、それで十分ではありませんか!