榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

カードリーダーの小さな企業スクエアが、巨大な化け物アマゾンに勝てたのはなぜか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2468)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年1月19日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2468)

このところ、毎日11:00~16:00頃、我が家の庭にジョウビタキの雄(写真1~3)が現れるようになりました。夜が明けるや否や、やって来る常連のメジロ(写真4~6)が並んで仲良くしています。ツグミ(写真8~10)をカメラに収めました。満開のソシンロウバイ(写真11~14)が芳香を放っています。夕焼けです(写真15)。

閑話休題、モバイル決済用のカードリーダーの小さな企業スクエアが、グローバル巨大企業アマゾンに勝てたのはなぜか、この答えを知りたくて、スクエア創業者の手になる『INNOVATION STACK――だれにも真似できないビジネスを創る』(ジム・マッケルビー著、山形浩生訳、東洋館出版社)を手にしました。

「いきなり、勝った。1年以上にわたり、巨大な化け物が企業の死屍累々の墓場の中で、ぼくたちを追いかけ回していた。この世で最もおっかない化け物アマゾンが、ぼくたちの製品をコピーして、安値で発表し、こっちの脳みそを食い尽くそうとしていた。でも2015年のハロウィーンに、何の予告もなしに化け物は攻撃をやめ、ごほうびをくれたのだった。このごほうびは、どんな飴入りの袋よりもいいものだった。アマゾンは競合商品をやめただけでなく、その製品の既存利用者に、ニッコリ顔のついた段ボールに入った小さな四角いカードリーダー(うちの製品だ!)を郵送したのだった。ハッピー・ハロウィーン! これは何か策略なのだろうか?」。

結論を明かしてしまうと、スクエアがアマゾンの攻撃を撃退できたのは、イノベーションスタックのおかげでした。

イノベーションスタックとは、「だれも解決したことのない、ひとつの問題を解決する(イノベーション)ことで、次々と起こる新たな問題を解決し続けて得られる一連の発明。積み上がったイノベーション。この積み上げが多ければ多いほど、競合他社に真似されにくくなる」と説明されています。

スクエアのイノベーションスタックが具体的列挙されています。①単純に、②加盟無料、③安いハードウェア、④契約なし、⑤電話サポートなし、⑥美しいソフト、⑦美しいハードウェア、⑧すばやい決済、⑨純額決済、⑩低価格、⑪広告なし、⑫オンライン登録、⑬新しい詐欺モデル、⑭バランスシートによるアカウンタビリティ――の12です。「ライト兄弟と初の飛行機にちょっと似ている。飛行機は一つの発明じゃない。大量のイノベーションの山だ。オーヴィルとウィルバーは、単に離陸して飛ぶ方法を考えるだけじゃすまなかった。まず、プロペラを回せるだけの軽量エンジンが必要で、そんなものはだれも作ったことがなかった。いったん飛んでも、どうやって操縦する? だれも知らない。だってそんなに長いこと滞空できた人はだれもいなかったからだ。だからそれも考案する必要があった。そして、飛行機を着陸させる方法も、それまでだれも考案する必要がなかった。翼の形は確かに霊感に満ちた発明だったかもしれないけれど、飛行機そのものには巨大なイノベーションスタックが伴ったわけだ」。

イノベーションというと、つい天才の閃きを思い浮かべてしまうが、実際のイノベーションで重要なのは、それを実装する過程であり、その中の工夫であるということ、そして、その過程の積み重ねがイノベーションスタックなのだということを、本書は実例によって教えてくれました。