榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

隠す爪などさらさらないが 時々研いでる牙はある・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2652)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年7月21日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2652)

ジャノメチョウ(写真1)、ヒカゲチョウ(写真2)、アサマイチモンジ(写真3)、コミスジ(写真4)、チャバネセセリ(写真5、6)、オオシオカラトンボの雄(写真7)、アオイトトンボの雄(写真8)、ニイニイゼミ(写真9、10)、ニイニイゼミの抜け殻(写真11)、アブラゼミの抜け殻(写真12)、アオバハゴロモの幼虫(写真13)をカメラに収めました。

閑話休題、『都々逸っていいなあ』(吉住義之助監修、小野桂之介著、角川文化振興財団)には、秀逸な現代都々逸がたくさん収録されています。

【色恋もの】
●あなたの苗字にあたしの名前 小さく書いては消した夜――智華
●急に呼び出す困った人へ 小走り嬉しい夏の裾――みや
●前しか見えない前しか見ない 恋する心は真っしぐら―秋霖
●汗の匂いも七つの癖も 惚れてしまえばみんな好き――美津
●言葉づかいががらりと変わる 今朝は他人でない証拠――扇太郎
●鮨もつままずジョッキも空けず これから抱かれるひとといる――三保
●恋の生傷幾度もなめて 女はきれいに齢を取る――好子
●虹が跨いだ小さな町に 夢を預けたひとと住む――秋霖
●君と暮らした小さな駅を 急行列車で駆け抜ける――愛

【ユーモアもの】
●嬶(かかあ)天下と威張っちゃいるが たかが家来は俺一人――紫蘭
●老人ホームで傘寿を祝う 小百合という名はそのまんま――江成和子
●類は友呼ぶ言われてみれば ため息出るよな奴ばかり――園生
●化粧が厚くて顔認証の 機械が戸惑う今朝の顔――蟻好
●九号サイズと大見得切って ボタンが吹っ飛ぶ試着室――潤子

【含蓄もの】
●俺の言うこと聞かない鬼が 俺の心の隅にいる――安閑坊
●渡る世間の仏と鬼は 似たよな顔してやって来る――桂之介
●歯に衣着せずに生きてるけれど 人生やっぱり損してる――正臣
●楷書行書の時代を抜けて 草書をゆるりと生きている――陽子
●不釣り合いだと誰もが言った 意地を通した共白髪――孔亮
●腹が立つこと近頃なくて そんな自分に腹が立つ――湘風
●社会を変えると燃えてた頃の 若さが恋しい時計台――三保
●昔よかった話はお止め 今日を生きてくめしを炊く――久子
●ゆるり参ろうあの世とやらは 急いで行くよなとこじゃない――天遊
●気にせず使えば楽しい余命 残高知らない方がいい――勲
●喜寿や傘寿は洟垂れ小僧 生きてみせよう三桁まで――桂之介

【日常生活描写もの】
●金蔵疲労は機械を壊す 勤続疲労は燃え尽きる――絶甫
●残業つかない家事労働に 在宅勤務がおーいお茶――園生
●頭一つを同期の友が 抜いてくやしい社内報――宗太郎
●味方のつもりでこぼした愚痴が 敵のファイルに綴じてある――義明
●栄転送って左遷を迎え 支社は緑の風の中――江成和子
●知られたくないけど知らせたい ヘッドハンターから電話――園生
●学んだことより遊んだことが 役に立ってる定年後――土馬
●てめえなんぞは出て行きゃがれの 啖呵へ笑顔の世話女房――るり男
●喧嘩の仕舞いはまたあの話 妻の辞書にはない時効――桂之介
●愚図の屑のと言われた奴が でんと構えた同期会――義之助
●頼み上手と断り下手が 名前を連ねた発起人――章子
●今日は荒れてる屋台の客へ おやじ黙って酒を注ぐ――小ばん
●天下国家を論ずる前に ちゃんと払ってウチの付け――桂之介
●午後の図書館陽の射す座席 小説一冊分の旅――笑子
●売りに来たのに帰りの荷物 やはり増えてる古本屋――晋
●当ててごらんと言われた歳を 知っているから若く言う――勲
●人脈金脈なんにもなくて なくていいのに不整脈――ケン坊
●調子悪いと言いつつ今日も 病院三ヶ所行く元気――仙太郎
●隠す爪などさらさらないが 時々研いでる牙はある――蛙

私も都々逸らしきものを作ってみたくなりました――俺もなりたや涼風(すずかぜ)男 藤井大谷照ノ富士。