榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ホモ・サピエンスの並外れた進化は、「火」、「言葉」、「美」、「時間」によって推進された・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2678)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年8月16日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2678)

ヒガンバナ(写真1~5)が咲き始めました。キツネノカミソリ(写真6、7)、ナツズイセン(写真8~10)が咲いています。ミンミンゼミの雄(写真11)が、胴体を震わせて鳴いています。我が家の庭にアゲハチョウ(写真13)がやって来ました。ヤマトシジミ(写真14)は終日、花壇を飛び回っています。雌をカメラに収めました。

閑話休題、『進化を超える進化――サピエンスに人類を超越させた4つの秘密』(ガイア・ヴィンス著、野中香方子訳、文藝春秋)は、ホモ・サピエンスの並外れた進化は、4つの要素――火、言葉、美、時間――によって推進されたと主張しています。

「火」と「言葉」はよく言われることだが、「美」と「時間」を挙げる書は珍しいのではないでしょうか。

「(『火』、『言葉』の)次なる要素、『美』は、活動に意味をもたらし、共有する信念とアイデンティティのもとにわたしたちを融合させる。芸術表現は文化的な種分化――社会間、社会内の分化――を生じさせるが、その一方で、資源や遺伝子やアイデアの交換を促すことにより、遺伝的な種分化を抑制する。そして結果的に、より優れたテクノロジーを持つ、より良くつながった、より規模の大きい社会をもたらす」。美への欲求が人間と文化と社会を進化させたというのです。

「4つ目の要素、『時間』は、自然作用についての客観的、合理的説明の基礎になる。知識と好奇心は人間を、他の動物よりはるか遠くへ進むよう駆り立てた。わたしたちは世界とその中での自分の位置を秩序づけるために科学を発達させ、今や地球規模でつながっている」。時間をコントロールすることで、人間は複雑で段階的な技術と階層的な社会構造を創出することができた、また、時間を深く理解したことで、自分たちの歴史や、文化や環境の変化を、長期的な観点から見られるようになり、将来の計画も立てられるようになったというのです。

「これら4つの糸が織りなすものが、人間の並外れた性質と行動を形づくってきた」。

「現代は、人間がどのようにしてこれほど並外れた種になったかという、根本的な問いについて探究するには最適の時代だ。集団遺伝学、考古学、古生物学、人類学、心理学、生態学、社会学のエキサイティングな進歩が、人類の歴史について新たな洞察をいくつももたらし、人間という種がどのように発展してきたかについての理解が、根本的に変わろうとしている」。本書では、これらの成果が詳細に綴られています。

「美」と「時間」の重視と並んで本書を特色づけているのは、「ホムニ」への言及です。「今、わたしたちは瀬戸際に立っている。人間の遺伝子と環境と文化の相互作用によって、超協力的な人類の集団から、新たな生命体が生まれようとしている。わたしたちは超生命体になりつつある。それをホモ・オムニス(集合性人類)、略して、ホムニと呼ぼう」。正直言って、ホムニと呼ぶことには躊躇している私がいます。