榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

新聞の読書面は、時間も、カネも、人手もかけて作られている・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2909)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年4月4日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2909)

コチドリ(写真1~4)、アシブトハナアブ(写真5)、群がる雄たちに交尾は嫌と腹部先端を突き出したモンシロチョウの雌(写真6)をカメラに収めました。サトザクラ系のサクラのウコン(写真7~10)とギョイコウ(写真11~14)、ハナミズキ(写真15、16)が咲いています。因みに、本日の歩数は11,498でした。

閑話休題、『百冊で耕す――<自由に、なる>ための読書術』(近藤康太郎著、CCCメディアハウス)の言葉は、読書好きな私の心に響きました。

●紙の本が速読に最適な理由
「速読するために必須なのは、第一に、全体像を見通せることだ。・・・適当なスピードを選ぶ。速読とは、大局判断のことだ。第二に、行きつ戻りつできること。・・・速読とは、高速移動のことだ。したがって、速読にもっとも適したメディアは、紙の本ということになる。手にとって、厚みが分かる。全体像が見渡せる。ページを繰って、瞬時に移動できる」。まさに、そのとおりだ!

「速読が得意だった人は、だれだろうか。現代日本の作家では、司馬遼太郎、井上ひさし、大江健三郎、この三人が御三家であったといわれている」。

●他者の脳内をめぐる、書店散歩
「思いもしなかった出会い、運命的な出会いがあるのは、いつも書店であった。志のある書店員がいるところは、すぐに分かる。棚の作りが、雄弁に語っている。・・・地味な本でも、古い本でも、企画棚を作る書店員の配置の妙で、新しい息吹が与えられる。・・・週に一度、リアルの書店を定点観測し、企画を考える。資料を買う。偶然目にして気に入った本を買う。これは、楽しい散歩だった」。この気持ち、分かるなあ。

●新聞書評―― 一流の本読みが集う紙面
「新聞の、読書面にかける時間とカネは、やや異常だ。ものすごくぜいたくに作っている。・・・時間も、カネも、人手もかけて作られているのが、新聞の読書面だということだ。これだけのカネや手間ひまをかけて、彼ら(書評委員)はなにをしているのか。『わたしのため』に、下読みしてくれているのである。新聞各社の書評委員は、日本でも有数の知識人だ。その、プロ中のプロである『本読み』が、あまたある新刊書の中からの選りすぐりを、難しい専門書も、高価な学術書も、ベストセラーや手軽な文庫・新書も含めて、『わたしのため』に下読みしてくれているのである。本の読みどころを、紹介してくれているのである。これを利用しない手はない。大きな声で言えないが、わたしなどは、新聞は書評だけ読んでいればいいとさえ思っている。ただ、一紙ではだめだ。朝日、毎日、読売、日経、産経の全国紙、さらに、東京に住んでいるなら東京新聞や、地方在住ならブロック紙、地方紙と呼ばれる地元の新聞を入れて合計六紙。すべての書評欄に目を通す」。私は、毎週、全国紙5紙の書評欄に目を通し、興味を惹かれた本を「読みたい本」リストに加えることが習慣になっています。

著者の「本は、答えが入っている箱ではない。読書とは、問いを、自分で言葉にできるようにする、遠回りの、しかし確実なトレーニングだ。問う筋力をつけている。自分の問いのほんとうの意味が、分かる。本ににじりよっていくうち、自分の言葉で、問いを表現できるようになる。正しく問うことができて初めて、暫定的な答えが現れる。<分かる>とはそういうことだ、<知識>が堆積していって、そのエネルギーで発火するのが、<理解>という現象の本質だ」という言葉は、読書の本質を的確に表現しています。

巻末に著者が選んだ「百冊選書」が掲載されています。100冊のうち46冊は私も読んでいました。未読本の『今こそルソーを読み直す』(仲正昌樹著)を「読みたい本」リストに加えました。