明確な順位関係がなく、やられたらやり返すベニガオザルの社会では、多様な和解行動が発達しているんだって・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2926)】
東京の調布・小金井・三鷹に跨る野川公園での自然観察会に参加しました。鳥の唐沢孝一先生(写真1)から、都心のハシブトガラス・ハシボソガラスがピーク時の1/7に激減したのは、餌となる生ごみが減り、天敵のオオタカが増えたためと思われるとの説明がありました。唐沢先生は私の愛読書『カラスはどれほど賢いか――都市鳥の適応戦略』、『唐沢流 自然観察の愉しみ方――自然を見る目が一変する』、『身近な鳥のすごい食生活(カラー版)』の著者です。高木でピョー、ピョーと鳴くアオゲラが見つかったが、残念ながら撮影には失敗。昆虫の鈴木信夫先生(写真2)がオニヤンマの幼虫(写真3)を捕獲したが、観察後、直ちに棲息場所に戻しました。イヌザクラに集まっているヨコヅナサシガメ(写真4、5)、エゴツルクビオトシブミの雌(写真6)と卵を産み付けた揺り籠(写真7)、ガのクロハネシロヒゲナガの雄(写真8)、雌(写真9の下)をカメラに収めました。植物の飯島和子先生(写真10)から、セイヨウタンポポと、ここに群生するカントウタンポポ(写真11~13)の見分け方の説明がありました。小学3年生の小さな生物学者・五十嵐航君(写真14)が、小さくて見つけ難いイヌノフグリの花(写真15)と実(写真16)の撮影を手助けしてくれました。カラスビシャク(写真17)、ラショウモンカズラ(写真18)、ギンラン(写真19)が咲いています。桃色のオドリコソウ(写真20、21)が群生しています。ヤブヘビイチゴが実を付けています。因みに、本日の歩数は13,001でした。
閑話休題、『白黒つけないベニガオザル――やられたらやり返すサルの「平和」の秘訣』(豊田有著、京都大学学術出版会)は、ユニークな行動をするベニガオザルのタイの片田舎における観察記録です。
彼らの社会は、やられたらやり返す平等な社会だというのです。「社会的順位関係が不明瞭なベニガオザルの社会。ゆえに争いが頻発し、激しい攻撃の応酬に発展することも。そんな社会の中で、彼らはいかにして『平和』な暮らしを実現しているのだろうか」。
観察によって、さまざまな和解行動が明らかになってきました、「至近距離で見つめ合う、唇を噛む、腕を噛む、陰嚢を噛む・握る。やられたらやり返すケンカをエスカレートさせないために、ベニガオザルには多様な和解行動が発達している」。
驚くことに、真っ白い赤ちゃんが群れの平和に貢献しているというではありませんか。「毛色が白い間はオトナから特別扱いを受ける代わりに、群れの『平和』維持のために重要な役割を担う」。
繁殖も独特です。「連合を組んでメスを囲い込むオスたち、交尾中のペアに群がる仲間たち、オスの戦略を巧妙にかわすメスたち。知られざる繁殖生態の一端が、観察と遺伝解析で明らかになってきた」。
私の頭の中に、これまで知らなかったベニガオザルという種名が刻み込まれました。