榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

48歳の女性と、妻がいる30代半ばの男性との性愛関係の赤裸々な記録・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2976)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年6月10日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2976)

色帯のないタイプのミスジマイマイ(写真1)をカメラに収めました。スカシユリ(写真2~4)、ブラックベリー(写真5、6)が咲いています。我が家では、ナツツバキ(写真7、8)、コクチナシ(写真9~11)、アジサイ(写真12)、ガクアジサイ(写真13、14)が咲いています。

閑話休題、『シンプルな情熱』(アニー・エルノー著、堀茂樹訳、ハヤカワepi文庫)を読んで感じたことが、3つあります。

第1は、本書が、著者アニー・エルノーの1年間に亘る不倫関係の細部に至るまで自伝的な小説というよりも、詳細な時系列の記録と呼ぶべき作品であることの意外感。

第2は、48歳の女性が、妻がいる30代半ばの東欧の外交官と性愛関係を結ぶが、その精神的、肉体的欲望と葛藤が赤裸々に描かれていることの衝撃感。

第3は、ヒロインは教養ある高校教師だが、どういう人間にとっても恋は盲目なんだなという納得感。

「昨年の九月以降、私は、ある男性を待つこと――彼が電話をかけてくるのを、そして家へ訪ねてくるのを待つこと以外、何ひとつしなくなった。・・・彼とともに過ごす夕べのために、ウイスキーや、果物や、色々なつまみ物を買い揃える。彼が来たとき、どの部屋で交わることになるか想像する」。

「彼が去るとまもなく、途方もない疲労感に襲われて、私は身動きできなくなった。・・・もちろん、私自身、翌日まで洗浄はせず、彼の精液を保っていた」。

「彼からの電話がないまま日がたつにつれ、私は、捨てられたのにちがいないという思いを募らせた」。

「結局、私が確信できることはただ一つ、彼が欲望しているか、していないか、そのことだけだったのだから。疑問の余地のない唯一の真実は、彼の性器を見れば一目瞭然だった」。