榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

これまで女房にも内緒にしてきたが、私は奇妙な皮膚感覚の持ち主です・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2982)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年6月16日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2982)

東京・文京の小石川後楽園で、甲長25cmほどの2匹のスッポン(写真1~5、6~7)に出くわしました。アメンボが交尾しています(上が雄、下が雌。写真8)。ハナショウブ(写真9~15)、セイヨウスイレン(写真16~18)が咲いています。因みに、本日の歩数は12,187でした。

閑話休題、これまで女房にも内緒にしてきたが、私は奇妙な皮膚感覚の持ち主です。皮膚にできた袋状の窪みに、本来そこにいるはずのない小さな生き物がびっしり詰まって蠢いている状態を思い描くと、身悶えするほどの興奮を覚えるのです。

こういう私の秘密を知っているかのような短篇に出くわしました。短篇集『花に埋もれる』(彩瀬まる著、新潮社)に収められている『マイ、マイマイ』が、それです。

「立ち上がった鈴白くんの体から白っぽいものがこぼれた。座布団の上にぽたんと落ちる。平べったいおはじきみたいなそれは、つるつるした表面に薄く渦巻きみたいな模様が浮かんでいた」。

「白々とした朝の光に目を覚ますと、枕元には見覚えのある渦巻き模様のおはじきが転がっていた。鞄から出した記憶なんて、ないのに」。

「机の上のスマホの隣に置いて寝たはずなのに、白い渦巻き模様のおはじきはベッドの足下に落ちていた。おはじきは夜中にしょっちゅう位置を変える。まるで生き物のように。生きて、いるのかもしれない。だって明らかに奇妙だ。そして、鈴白くんと繋がっている」。

「膝を曲げ、手探りでかりかりと足首を掻くうちに、ずぶっと人差し指の先が自分の皮膚に埋まった、ぎゃあ! という悲鳴を飲み込みながら跳ね起きて、恐る恐る確認する。指の第一関節までが、足首の裏側の、かかとへ向かう太い骨と筋肉のあいだの柔らかい部分に食い込んでいた。え、なにこれ。・・・そこには縦四センチほどの、細長い割れ目があった。傷、というわけでもない、ただの肉の割れ目だ。・・・中にはわずかな空間がある。まるでなにか、小さなものが入っていたみたいな。かかとのすぐそば、波だったシーツのくぼみに平べったいものが落ちていた。白くて丸い、表面にうっすらと渦巻き模様の浮いた、光沢のあるおはじきっぽいもの。鈴白くんのものよりも少し小さな、十円玉サイズのそれをつまむ」。

「視界の端で動くものがあった。渦巻き模様のおはじきが二つ、私のトートバッグの内ポケットから這い出して、蜂蜜が流れるのと同じゆるやかな速度でフローリングを進んでいる。薄い光を放つそれは、白いカタツムリだった。・・・大きいカタツムリは眠っている鈴白くんの体へ、小さなカタツムリは私の方へとにじり寄ってくる。この子らは、弾き出された肉体へ帰りたいのだ」。

同病(?)の彩瀬まるに、もっと早く出会いたかったなあ。