榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

忙しい日々を送っている人たちに癒やしを与えてくれる絵本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3001)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年7月5日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3001)

さまざまな色合いのグラジオラス(写真1~8)が咲き競っています。ニワトコ(写真9)が実を付けています。何から何まで私の面倒を見てくれている女房の4日遅れの誕生日祝いをしました。我が家の頭上でカワラヒワ(写真13)が囀っています。ガクアジサイの萼片の裏が赤く色づいています。

閑話休題、『マルスさんとマダムマルス』(ささめやゆき絵・文、ひだまり舎)は、忙しい日々を送っている人たちに癒やしを与えてくれる絵本です。

著者が若かりし時、フランス北西部のノルマンディ半島の先端に位置する海辺の小さな村で暮らした1年間を描いたものです。「こんな地図にものっていない町で、誰も怨まず誰にも憎まれず、心はすみずみまで澄んで、ずっと絵を描いてくらしてきたのだ。もし人にその核となる時間と空間があるとするならば、ボクはまちがいなくこの町をさすだろう」。

「大家のマルスさん、ジャン・マルス62歳、おくさんの名はシモーヌ54歳、愛犬は気のよわいスプリンター。映画『ピノキオ』を見ても貰い泣きしてしまう心の優しいマルスさんは会うたびにこう言うのです。『サリュー、絵はうまくいっているかい』」。

「こうして世の中はすこしずつすこしずつ変ってゆくのでしょう。でもムッシュウ・マルス、マダム・マルスを見ていると何も変ったようには映りません。マルスさんは昨日のつづきのペンキ塗りにあけくれ、マダム・マルスは台所で夕食の支度にたっぷり時間をかけ、コキーサンジャックのおいしそうな匂いをあたりにただよわせています。そしてスプリンターはいつものようにテーブルの下にねそべっています」。

ほのぼのとした絵が、心を鎮めてくれます。