榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

文豪たちも、それぞれ悩みを抱えていたのだ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3122)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年11月4日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3122)

アキアカネの交尾・産卵(写真1~6、前が雄)を目撃しました。トキワサンザシ(写真7、8)、タチバナモドキ(写真9、10)が実を付けています。女房も私も、固くて歯応えのあるジロウガキ(次郎柿。写真14)が大好きです。因みに、本日の歩数は11,143でした。

閑話休題、『文豪悶悶日記』(荒木優太・住本麻子著、自由国民社)で、とりわけ興味深いのは、●太宰治の「悶悶日記」、●夏目漱石の「入社の辞」、●国木田独歩の「列伝」――の3つです。

●悶悶日記

「 月 日。苦悩を売物にするな、と知人よりの書簡あり」。

「 月 日。百五十万の遺産があったという。いまは、いくらあるか、かいもく、知れず。八年前、除籍された。実兄の情により、きょうまで生きて来た。これから、どうする? 自分で生活費を稼ごうなど、ゆめにも思うたことなし。このままなら、死ぬるよりほかに路がない。この日、濁ったことをしたので、ざまを見ろ、文章のきたなさ下手くそ。壇一雄氏来訪。壇氏より四十円を借りる」。

「 月 日。この一年間、私に就いての悪口を言わなかった人は、三人? もっと少ない? まさか?」。

●入社の辞

「突然朝日新聞から入社せぬかという相談を受けた。担任の仕事はと聞くとただ文芸に関する作物を適宜の量に適宜の時に供給すればよいとのことである。文芸上の述作を生命とする余にとってこれほど難有(ありがた)いことはない、これほど心持ちのよい待遇はない、これほど名誉な職業はない。成功するか、しないかなどと考えていられるものじゃない。・・・(東京帝国)大学で講義をするときは、いつでも犬(=漱石の敵対者)が吠えて不愉快であった。・・・(大学を)休(や)めた翌日から急に背中が軽くなって、肺臓に未曾有の多量な空気がはいって来た。・・・人生意気に感ずとか何とか言う。変り物の余を変り物に適するような境遇に置いてくれた朝日新聞のために、変り物としてできうる限りを尽すは余の嬉しき義務である」。

●列伝

「派手な人生じゃなくてもいいじゃない! 誰もが伝記の主役になれる」。