『源氏物語』は嫉妬に貫かれた「大河ドラマ」だ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3185)】
今日は嬉しいことがありました。毎年出現していたのに昨年は姿を見せなかったルリビタキの雌(写真1~3)が、同じ場所に戻ってきたのです。確定はできないが、状況証拠から同一個体と思われます。ジョウビタキの雌(写真4)、アオジの雌(写真5~7)、ツグミ(写真8)、オオバン(写真9)、ミシシッピアカミミガメ(写真10)をカメラに収めました。ラクウショウ(写真11)が紅葉しています。センダン(写真12、13)の実が落下しています。我が家のユキヤナギ(写真16)が紅葉しています。因みに、本日の歩数は12,719でした。
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閑話休題、『嫉妬と階級の<源氏物語>』(大塚ひかり著、新潮選書)は、「『源氏物語』は嫉妬に貫かれた『大河ドラマ』」だと断言しています。「嫉妬には、必ず階級が絡み、そこには自己認識と世間の評価とのズレが関わってくる。自分がコミュニティのどの位置にいるか、つまりはどの階級にいるか、人間は無意識に確認し、結果、意に反した状況であれば、ライバルを引きずり落としたい、自分が上になりたいと、絶えず『嫉妬』と『階級』の狭間であえぎ、生きているのだ。『源氏物語』は、こうした人間の生の根源に迫っている」。
「貴婦人が親兄妹や夫以外の男に顔を見せなかった当時、男に顔を見られるということは、体をゆるすことを意味していた。それもあって、仕事柄、多くの人に顔を見られる宮仕えは、良家の子女がすべきではないという考え方があったのだ。実際、女房は公達の気軽な性の相手となりがちだ」。
「見えてくる紫式部像は、『先祖は主流だったのに、祖父の代には落ちぶれて、自身も夫を亡くし、家庭教師という特別待遇ながらも、人に仕える立場に成り下がっていた』である」。「自分が(高貴な人々とは)対等でない、人間扱いされていないという実感があったからだろう。プライドが高いからこそ、それに見合わぬ低い現状とのギャップが苦しいのである。このような土壌の上に生まれたのが『源氏物語』である」。
著者・大塚ひかりは、「厚遇される落ちぶれ女と、冷遇される大貴族の令嬢」というケースが多く『源氏物語』で描かれているのは、紫式部のたくらみだというのです。「そこには、明らかに紫式部の意図があったとしか思えない。上流ではなく、(自分も属する)中流の女を『成功させる』という意図である」。「『源氏物語』に描かれる『中流の女推し』『落ちぶれ女の優遇』や『権門の女の受難』には、紫式部自身のバックグラウンドや願望が反映されていると思うのである」。
「(宇治十帖の)彼ら(明石の入道とその娘・明石の君)の夢の実現は同時に、高貴な先祖を持ちながら、受領階級に落ちてしまった紫式部の、物語を使った自己実現とも言えるのではないか」。『源氏物語』は、ある意味、敗者復活の物語だというのです。
召人(めしうど)に初めてスポットを当てた『源氏物語』にも言及しています。「妻でも恋人でもない存在。彼女たちは、平安中期、『召人』と呼ばれていた。女房として召し使われつつ、主人筋の男の性の相手もする人の意で、一般女房よりは優遇されることが多いものの、立場はあくまで使用人だ。この召人の存在や気持ちが詳述されるのが『源氏物語』の大きな特徴」だというのです。
知的好奇心を刺激される一冊です。