榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

南海トラフ地震の70~80%という確率は大幅に水増しされていることが明らかに・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3235)】

【読書の森 2024年2月24日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3235)

オオバン(写真1、2)、ツグミ(写真3)、ムクドリ(写真4)、ハクセキレイ(写真5)、シジュウカラ(写真6)をカメラに収めました。ツバキカンザクラ(写真7~9)が咲いています。カンヒザクラ(ヒカンザクラ。写真10)が蕾を付けています。オオイヌノフグリ(写真11、12)が咲いています。

閑話休題、『南海トラフ地震の真実』(小沢慧一著、東京新聞)には、驚くべきことが書かれています。

静岡県から九州沖にかけてマグニチュード(M)8~9級の巨大地震が30年以内に70~80%の確率で南海トラフ地震が発生するとされているが、この確率は特殊な計算式を使って水増ししたもので、全国の地震と同じ基準で算出すると20%程度だというのです。

この事実と背景が新聞記者・小沢慧一の綿密な調査取材によって白日の下に晒されています。

私たちは、「地震予知」と「地震予測」の違いを知っておかねばなりません。地震予知は地震が起きる前に発生すると考えられている前兆現象を観測でとらえ、「3日以内に静岡県で地震が発生する」などとピンポイントで言い当てるものです。一方の地震予測は過去に起きた地震の統計から、「30年以内に何%」などと大ざっぱな次の地震の時期を予測するものです。しかし、予知・予測されることなく発生した阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、能登半島地震の例を見ても、残念ながら、現在の地震学では予知も予測もできないのが実情なのです。

それなのに、予測を出し続けるのはなぜでしょうか。著者は、その背景に「地震ムラ」の存在があり、ポストや研究予算などの既得権益が絡んでいると告発しています。

さらに、南海トラフ地震や首都直下地震の水増し予測を受けて、地震予測の確率が低い地域の住民の油断を生んでいるという弊害にも言及しています。

「少なくとも、地震本部は30年確率を出すのはやめた方がいいだろう。社会が地震学者に出してほしいと思っている確率は、現在発表されているぼんやりとしたものではない。もっと精度が高い予知・予測ができるようになるまでは、しばらくはできる『フリ』はやめるべきだ」。著者のこの忠告に大賛成!