榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

日本のシングルマザーは世界で一番、働いているのに、世界一の貧困率に喘いでいるのは、なぜか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2570)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年5月1日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2570)

キンラン(写真1~4)が群生しています。キンランを食べる、シャクトリムシと呼ばれるシャクガの幼虫(写真2、3)を見つけました。キンランの傍らで、ギンラン(写真5、6)が咲いています。ムラサキツユクサ(写真7)、ホオノキ(写真8、9)が咲いています。ベニシジミ(写真10)、ヒメウラナミジャノメ(写真11、12)をカメラに収めました。

閑話休題、私はシングルマザーの貧困問題に怒りを感じている一人です。『シングルマザー、その後』(黒川祥子著、集英社新書)は、かつてシングルマザーであった著者の、複数のシングルマザーと専門家へのインタヴュー集です。本書のおかげで、シングルマザーの貧困の背景が見えてきました。

「取材に応じてくれたシングルマザーたちの話から浮かび上がったのは、その未来に『老後』などないということだ。たった一人で悩み苦しみながら、手塩にかけて育てた子どもが巣立った後、ようやく自分なりの楽しみを大事にしながら、安心して過ごすという日々が、なぜ、この国のシングルマザーには欠片すら。もたらされないのだろうか」。

その背景は、このようにまとめることができます。

●正規雇用の仕事に就くのが難しいので、収入を増やすことができない。

●別れた夫から養育費の支払いを受けられないケースが多い。「現在、養育費の支払いを受けているシングルマザーは、全体の2割ほどしかない」。

●頼みの綱の児童扶養手当が下げられ続けている。「児童扶養手当の全額支給の所得制限額が、2018年から年収160万となっています。この所得制限額をもっと上げるべきだと思います」。我が国の児童扶養手当は改悪され続けているのだ。

●国のひとり親政策の予算額が限定されている。「ひとり親の数が増えても、その中でやりくりするのですよ。これだけ離婚件数が増えてひとり親が増加しても、予算を大きくするのではなく、前年度予算の枠内でやりくりしようとするわけです」。

●離婚はわがままという考え方がまかり通っている。「離婚するのはあなたの勝手でしょう。苦労するのを承知で離婚したんでしょう。自分が子どもを引き取ると言ったのでしょう。自分で勝手に離婚したのに、なんで国に助けて欲しいと言うのだ、そういう考え方がずーっと(政府や国民の)根底にあることが窺えます」。

●シングルマザーの子どもは教育資金の返済という重荷を長期間、背負わされている。「大学を卒業するときには大体、400~500万円の借金を背負って、社会に出て行くわけです。ひとり親という環境で育ったばかりに、返済に20年はかかる借金を、子どもが背負わなければいけないとは、あまりに理不尽過ぎるではないか」。

●母親も教育ローンの返済に押しつぶされそうな日々を生きなければならない。「子育てを終えた母親に待っているのは、どのような未来でしょうか? 子どもに経済的な支援は頼めません。経済面ばかりではなく、精神面でも大変な日々だと思います」。

「日本のシングルマザーは世界で一番、働いている。それなのに、世界一の貧困率に喘いでいる。その抜本問題を解決することなしに、働け、自立しろと国は謳う」。