著者のミニ地球に、ダンゴムシに代わる素晴らしい動物が出現した・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3244)】
越冬昆虫観察会に参加しました。ヨコヅナサシガメの幼虫(写真1)、ヒゲジロハサミムシ(写真2)、ヤマトシロアリ(写真3)、マエアカスカシノメイガ(写真4)、スモモキリガ(写真5)、ガ(種名不明)の蛹(写真6)、ウスタビガの繭(写真7)、ヒロヘリアオイラガのものと思われる繭(写真8)、オオカマキリの卵鞘(写真9)、トビズムカデ(写真10)、アオズムカデ(写真11)、クロヒメヤスデと思われる個体(写真12)、ミミズの一種(写真13)、キセルガイ科の一種(写真14)を観察することができました。
閑話休題、『先生、シロアリが空に向かってトンネルを作っています!――[鳥取環境大学]の森の人間動物行動学』(小林朋道著、築地書館)は、「先生!シリーズ」の第17弾です。「継続は力なり」の見本のようなシリーズです。
とりわけ興味深いのは、「『ミニ地球』をあらためて思い出してください――ダンゴムシに代わる素晴らしい動物が見つかった」の章です。
「『革命的というか、ミニ地球を一段レベルアップさせるような出来事が起こったのだ』と言った理由、すぐにおわかりになった方もおられるだろう。つまり、ヤマトシロアリが入ってくれれば、ミニ地球は、『消費者』であるシロアリ本体と、そのなかの原生動物のなかの細菌という『分解者』を同時に得ることになるのだ。そして、ヤマトシロアリはミニ地球のなかで繁殖し、菌類など(細菌類ではない)とともに、生態系の維持にずっとかかわってくれるのだ。おまけに、ヤマトシロアリたちは、個体が集合して、そこから『仕事』に出ていくような『巣』のようなものをつくり、それをミニ地球の外側から見ることができるのだ。毎朝、どんな変化が起こっているのか、ほかの生物たちの変化と合わせて見る楽しみが増える。 いや、これからが楽しみだ」。著者の昂揚ぶりが伝わってくるではありませんか。
「骨を壊してキャンパスの街灯の下に落ちていたユビナガコウモリ」の章で言及されている、ヒトとチンパンジーの違いの説明は勉強になりました。
「チンパンジーは、そういう方向への変化という戦略はとらなかった。ヒトの場合とは戦略が違っていたわけだ。『遠い先の場所の状況や、何カ月も先の餌資源の変化の予測にもとづいた行動の計画』よりも、熱帯雨林の、特に樹上に、いつでもどこでも実る豊かな餌を、直接手に取って得るという戦略のほうが有利だったのだろう。 ヒトは、『広範囲の<時間>や<空間>を考慮した階層性の高い予測』を手にしたがゆえに、その予測をより高確率で的中させるため、不安や喜びといった感情も同時に手にした。感情によって予測を調整するのである。たとえば、新たに入手した情報により不安を沸き立たせ、予測を変更したり、成功の可能性の高さを感じとり喜びの感情とともに予測をより強く信じたり・・・といった具合である(別の視点から見れば、不安は『注意して、覚悟して行動すべきだ』という、生存・繁殖に有利になるように脳が送ってくれたアドバイスだ。それを理解しておけば、不安によって、事象にパニックになることなく、今までより深い知見を有した個体になることができる。それをわれわれは『成長』と呼ぶ)。 そういった方向への進化によってヒトが、不安や悲しみといった苦しい感情を体験するようになったからといって、進化自体はまったく影響を受けない。予測の的中率が上がり、生存・繁殖が有利になれば、ただそれだけが原因になって進化は進んでいく」。