榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

老人こそ、心身ともに重荷を捨て、身軽を目指せ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3263)】

【読書クラブ 本好きですか? 2024年3月22日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3263)

コチドリ(写真1~6)、タシギ(写真7~9)、バン(写真10)、オオバン(写真11)、コサギ(写真12)をカメラに収めました。ユキヤナギ(写真13~15)が咲いています。

閑話休題、『ブッダに学ぶ 老いと死』(山折哲雄著、朝日新書)のおかげで、ブッダについて多くのことを学ぶことができました。

「ブッダ(釈迦、シッダールタ)が開いた仏教は、まさに『生老病死』を根本テーマとし、全ての苦しみや悲しみから完全に離れることを究極の目的としています。それを達成した人間がブッダであり、彼の教え、言葉と実践、あるいは伝説を弟子たちが世代を超えて書き残し、仏典(経典)として約2500年も受け継がれているわけです」。

「釈迦の言葉を弟子たちがまとめた最古の仏典と言われる『スッタニパータ』には、老いや病、死に関する記述が少しはあります。・・・<若い人も壮年の人も、愚者も賢者も、すべて死に屈服してしまう。すべての者は必ず死に至る>」。

「私は無常を釈迦の教えの基本、原則だと思っています。その具体的内容は次の3つです。第1は、世の中に永遠なるものは一つもない。第2は、形あるものは壊れる。第3は、人は生きて死ぬ」。

「日本では、小乗仏教に関心を持ち、それが釈迦の生き方と非常に深いところでつながっているということを理解する人が少ないわけです。大乗仏教至上主義は日本の各宗派が釈迦如来よりも大日如来や阿弥陀如来、薬師如来などを重視している状態を見ればよくわかるでしょう。たとえば、浄土真宗の本尊は阿弥陀如来です。だから釈迦如来、大日如来、薬師如来のことは何も言わないし、それを誰もおかしいとは思いません。ただ、今日の普遍性や多様性というような観点から見ると、やはり大乗仏教至上主義は偏った宗教観だと言えます」。ブッダ大好き、大乗仏教大嫌い人間の私は、思わず、快哉を叫んでしまいました。

「老人こそ、心身ともに重荷を捨て、身軽を目指す。・・・問題は、死に向かってどういう気持ちで、どういう覚悟で生きるかということなんですね。つまり、老いていく自分の姿をどのように考えるかというのが本当の問題になるわけです。・・・死に近づく過程でいろいろな欲望を捨てざるを得ません。それでも生きている限り、誰もがよりよい生き方を模索するわけです」。

「人生の後半はいろいろな重荷を手放して、なるべく身軽になることが大事なんですね。私が尊敬する日本の先覚者4人、西行、親鸞、芭蕉、良寛の人生模様を見ると、結局は身軽で自由な世界に達しています」。

「死後の世界について、釈迦は何も語っていない。・・・釈迦は『涅槃に入る』とは言いましたが、死後の世界については特に言っていません」。

「インドには仏教以前から『輪廻』という宗教的世界観があります。肉体は生から死に至るが、魂は別の肉体に転生し、永久に生から死を繰り返すという信仰です。これは当然ながら釈迦にも影響しています。釈迦はこの輪廻から抜け出そうと修行したとも言えます。だから仏教では、悟りを開いた者を『解脱者』と呼んだりするわけです」。