榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

マルセル・プルーストのコアなファン向きの論文集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3294)】

【読書の森 2024年4月18日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3294)

シャクナゲ(写真1~8)、ネモフィラ(写真9)、シバザクラ(写真10~17)が咲いています。我が家の庭師(女房)から、ウスベニカノコソウ(写真18)、ガザニア(写真19)が咲いたわよ、との報告あり。

閑話休題、マルセル・プルーストに関心を抱いている者、『失われた時を求めて』の愛読者であれば、プルーストが寝室をコルク張りにして『失われた時を求めて』の執筆を続けたこと、また、彼が持病の喘息の発作を防ぐため自室を燻蒸していたことは知っているだろうが、『プルースト 創造の部屋』(平光文乃著、大阪大学出版会)は、彼の「部屋」(寝室)を巡る、そういうレヴェルを超えたマニアックというか、専門的というか、ともかく、そういう一冊です。この件(くだり)、プルーストの文体を真似てみたが、当然のことながら、なかなかうまくいきませんね。

本書では、プルーストの創作の場であった「部屋」、そして、彼の人生が色濃く反映された彼の作品における「部屋」、という重要概念が、初期作品からどうように発展し『失われた時を求めて』の成立を実現させたのか、また、この小説においていかなる機能を果たしているのかが丹念に考察されています。

プルーストは、1909年に友人のアントワーヌ・ビベスコへの手紙の中で、こうした部屋での執筆活動に言及し、<孤独な生活のおかげで、愛していた人たちを観念によって再創造することができるようになった>と書いています。この一節は、プルーストの創造行為の場の中心が部屋であることを示すだけでなく、その部屋が同時に彼の愛する人々や過去、そして外の世界をも取り込み、その創作を可能にしたことを物語っています。

プルーストのコアなファン向きの論文集です。