榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

皇后エリザベート暗殺事件の犯人は、なぜ犯行に及んだのか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3365)】

【月に3冊以上は本を読む読書好きが集う会 2024年6月27日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3365)

オナガと雛(写真1、2)、オナガ(写真3~6)、チャバネアオカメムシ(写真7)、ベニシジミ(写真8)、ヤマトシジミ(写真9)、アメリカザリガニ(写真10、11)をカメラに収めました。ヤブカンゾウ(写真12~14)が咲いています。

閑話休題、ハプスブルク家が終焉に向かいつつあった時期に起こった皇后エリザベート暗殺事件は、これまで読んだ中で一番愉しめた歴史書『ハプスブルク一千年』(中丸明著、新潮社)では、このように記されています。「皇帝(フランツ・ヨーゼフ1世)は、皇后エリザベートを無政府主義者のテロで失う。1998年9月、旅行先のスイスのレマン湖畔で船に乗りこもうとしていたところを、忍びよったイタリア人のテロリストの凶刃に斃れたものである」。

皇妃エリザベートの暗殺者 ルイジ・ルキーニ回顧録』(ルイジ・ルキーニ著、西川秀和訳・解説、集英社インターナショナル)は、この無政府主義者が獄中で記した半生記と、訳者の長大な解説「その後のルキーニ」、「暗殺事件」、「不審死」で構成されています。

ルイジ・ルキーニはなぜエリザベートを暗殺したのか、裁判では何と証言したのか――が知りたくて、本書を手にした次第です。

尋問=計画的な犯行か。

ルキーニ=はい。

尋問=おまえはなぜ彼女を殺そうと決めたのか。

ルキーニ=悲惨な境遇だったからだ。生まれた日に私は母親に捨てられた。私は9歳から働き始めた。私は学校ではほとんど学べず、孤児院で学んだ。

尋問=おまえは犯行に及ぶことで何を成し遂げようとしたのか。

ルキーニ=私の人生の埋め合わせをするために。

尋問=おまえの犯罪がいかに恐ろしいものか考えて悔い改めたか。

ルキーニ=いいや、まったく悔いることはない。有史以来、ずっと世界中の人びとを虐げてきた者たちは悔い改めていない。

尋問=もしおまえがやり直せるとしたら、また同じことをするか。

ルキーニ=もちろん、私はまた同じことをするだろう。

終身刑という判決を言い渡されたルキーニは、「無政府主義万歳。特権階級を倒せ」と叫びました。