榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

黒澤明の『生きる』の種本は、トルストイの『イワン・イリイチの死』だった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3464)】

【読書の森 2024年10月3日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3464)

トビ(写真1)、キビタキの雌(写真2)、キタテハ(写真3)、イチモンジチョウ(写真4)、キタキチョウ(写真5)、ベニシジミ(写真6、7)、ナナホシテントウ(写真8)をカメラに収めました。

閑話休題、『ロシア文学の怪物たち』(松下隆志著、書肆侃侃房)のおかげで、ロシア文学について理解を深めることができました。

●フョードル・ドストエフスキーの『地下室の手記』
『地下室の手記』の病める地下鉄男は架空の存在であるが、今日、ますます不気味な存在感を増していると、著者・松下隆志が述べています。ドストエフスキー自身が、本作品について、「ロシア人の大多数である真実の人間を初めて克明に描き、その醜悪で悲劇的な面を初めて明るみに出したことは私の誇りだ。悲劇は醜悪さを意識しているところにある」と記しています。

●レフ・トルストイの『イワン・イリイチの死』
黒澤明監督の映画『生きる』には種本があり、それはトルストイの小説『イワン・イリイチの死』だというのです。主人公のイワン・イリイチは、そして『生きる』の主人公・渡辺も、避けがたい死から目を背けず、死と真正面から向き合うことによって、生の本当の意味を理解し、それによって死を克服したのです。

●ミハイル・エリザーロフの『図書館大戦争』
1973年生まれのエリザーロフの長篇『図書館大戦争』は、不気味なソ連回帰の現象をダーク・ファンタジーの手法で描いた作品です。美化されたソ連観がエリザーロフの世代の作家の多くに共通して見られると、著者が危惧しています。まさに、ソ連という名の亡霊が彷徨っているのです。