かつて、日本には、立てた10種の大願を実行した忍性という驚くべき僧がいた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3497)】
モズの雄(写真1)、シルエットだがイソヒヨドリ(写真2)、バン(写真3)、オオバン(写真4)、カワウ(写真5、6)、ダイサギ(写真7)をカメラに収めました。因みに、本日の歩数は11,539でした。
閑話休題、『語りだす奈良――1300年のたからもの』(西山厚著、ウェッジ)で、とりわけ興味深いのは、●日本の仏教は3人の女性から始まった、●大宝2(702)年の戸籍、●立てた10種の大願を実行した僧、忍性(にんしょう)――の3つです。
●日本の仏教は3人の女性から始まった
仏教が日本に公式に伝わったのは、欽明天皇13(552)年のこと。仏教の興隆にはどうしても出家者が必要と考えた蘇我馬子は司馬達等の娘を出家させた。これが善信尼である。まだ11歳だった。そして善信尼の「弟子2人」も出家させた。日本の仏教は、この3人の女性から始まった。
●大宝2年の戸籍
正倉院には大宝2年に作成された戸籍が残されている。御野国(現在の岐阜県)味蜂間郡春部里の国造族坂麻呂の家は26人家族である。戸主の坂麻呂は29歳。まだ若い。「兵士」とあるので、地域の軍団に所属しており、家にはいない。あるいは衛士として藤原京へ赴いているのかもしれない。坂麻呂の妻の若子売は46歳。坂麻呂より17歳も年上だ。二人はどのようにして知り合ったのだろうか。坂麻呂と若子売との間には4人の幼い女の子がいる。若子売は再婚で、前の夫との間に生まれた女の子も一緒に暮らしている。坂麻呂の弟たちや伯父一家も同居している。
●立てた10種の大願を実行した僧、忍性
文永9(1272)年、忍性は10種の大願を立てた。忍性は、ハンセン病の人たちを含む、当時「非人」と呼ばれた人々の救済に力を尽くし、病院や福祉施設をつくった。日本で初めての動物病院もつくっている。孤独・貧窮・乞食(こつじき)・病人・障害者、道に捨てられた牛馬をも憐れむ。自分を誹謗する者も善友とし、救済する。功徳を我が身に留めず、十方衆生に施し、悪趣(地獄・餓鬼・畜生の世界)に堕ちた者の苦しみを代わって受ける。かつて、日本には、こんな僧がいたのだ。