榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

体が吹っ飛ばされるような大どんでん返しが!・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3591)】

【読書の森 2025年2月3日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3591)

シナリオ集 終りに見た街』(山田太一・宮藤官九郎著、大和書房)には、体が吹っ飛ばされるような衝撃を受けました。

脚本『終りに見た街』は、戦争真っ最中の昭和19年6月にタイム・トラヴェルした主人公一家(本人、妻、母、長女、長男)と知人親子(知人、息子)が、3月10日の東京大空襲の被害者を少しでも減らそうと人々に避難を勧める物語です。主人公たちは歴史的知識として、大空襲によって下町で10万人の死者が出たこと、上野公園に逃げた人は助かったことを知っているからです。

必死になって、「3月10日に、浅草、深川、本所、日本橋で、大空襲があります!」と人々に言って回るのだが、ビラも配るのだが、人々は行動に移そうとしません。

最後に、文字どおり、体が吹っ飛ばされるような大どんでん返しが待ち構えています。

本書では、優れた脚本のストーリー展開が愉しめるだけでなく、山田太一の原作・脚本(1982年)と宮藤官九郎の脚本(2024年)を読み比べるという贅沢も味わえます。