榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ネアンデルタール人は、なぜ絶滅したのか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3627)】

【読書の森 2025年3月11日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3627)

ベニベンケイ(学名:カランコエ・ブロスフェルディアナ)が蕾、花を付けています(写真1、2)。

閑話休題、372ページある『ホモ・サピエンス再発見――科学が書き換えた人類の進化』(ポール・ペティット著、篠田謙一監訳、武井摩利訳、創元社)のおかげで、人類の進化に関する知識を更新することができました。

●今では私たちは、ホモ・サピエンスがアフリカで進化し、30万年前までにアフリカ大陸の各地に拡散し、やがて10万年前頃から、何度かアフリカを出て生息域を広げた時期があったことを知っている。ホモ・サピエンスの起源の地がサハラ以南のアフリカであることは明らかである。その後に南部のコイサン語族と東部のバントゥー語族に分岐し、さらに枝分かれを繰り返して、アフリカ南部、中部、東部という異なる地域で、異なるいくつかのグループが誕生した。

●アルタイ山脈の麓にあるデニソワ洞窟で発見された骨は、現時点では、少なくとも4人のデニソワ人、2人のネアンデルタール人、そして、驚愕すべきことに、デニソワ人の父親とネアンデルタール人の母親との混血の少女(およそ11万8000年前に生きていた)のものであることが分かっている。デニソワ人は、今後、十分な骨が集まれば、恐らくホモ・アルタイエンシスという名で呼ばれることになるだろう。

●ネアンデルタール人とデニソワ人の祖先は、ホモ・サピエンスとの共通祖先から約70万年前~50万年前に分岐し、デニソワ人は60万年前頃(最近の研究では40万年前頃)にネアンデルタール人と分かれたことが明らかになっている。

●デニソワ人の遺伝子がネアンデルタール人とホモ・サピエンスの双方との混血を明らかにしている以上、彼らは間違いなく出会っていた。ある意味では、ヨーロッパ人にとってのネアンデルタール人に当たるのが、アジア人にとってのデニソワ人だったと考えることもできる。彼らは、同じ頃にユーラシア大陸の西と東にそれぞれ存在した先住の人類だということだ。

●ホモ・サピエンスは、既に先住の人類がいたヨーロッパやアジアの地域に入り込むことに成功し、それ以外の地域には人類として初めて進出してみせた。そして、3万年前までに、ホモ・サピエンス以外の多様な人類は全て姿を消してしまった。

●過酷な氷河期の環境の中で生きた小規模集団にとって、配偶者選択のためのネットワークを維持するには、かなり骨が折れる移動が必要だった。移動力とネットワーク機能が衰えれば、数世代で絶滅してしまう可能性がある。もしかすると、それがネアンデルタール人を絶滅に追いやった最大の要因だったのかもしれない。